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RFリモコンの電波干渉対策

5.電波干渉対策

他の無線局との電波干渉を回避する手段として主な方法は以下の通りである。
① スペクトラム拡散技術による対策
② 周波数上の電波干渉対策
③ 時間軸上の電波干渉対策
④ 空間上の電波干渉対策
これらの電波干渉対策において、リモコンの商品性を考慮した対策を行う必要がある。以下にその対策方法について具体的に述べる。

5-1.スペクトラム拡散技術による対策
2.4GHz帯ISMバンドは、他の無線局と共存することが前提となるため、他の無線局へ与える干渉が小さく、また他の無線局から受ける干渉に強い変調技術が望まれるところ、従来のディジタル変調技術、例えば、振幅シフトキーイング(ASK:amplitude shift keying)、周波数シフトキーイング(FSK:frequency shift keying)では狭い特定の無線帯域を使用して通信を行うため、その特定周波数が他の無線局で使用されると直接影響を受けてしまい、ISMバンドに向いているとは言えない。
そこで、もともと軍事用の機密通信のために開発されたスペクトラム拡散技術が有効である。スペクトラム拡散とは、一次変調した信号をさらに広い周波数帯域に拡散させ送信する技術をいい、周波数ホッピング(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)と、直接拡散(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum)がある。いずれのスペクトラム拡散技術を用いても、従来のディジタル変調技術(ASK,FSKなど)より広い周波数帯域に拡散して送信するため、特定周波数の干渉を受けにくい。

5-1-1.周波数ホッピング(FHSS)
周波数ホッピング(FHSS)はBluetooth (IEEE802.15.1)等で採用されたスペクトラム拡散であり、周波数シンセサイザを用いて〔図3〕、信号の中心周波数を一定の順序で切り替え、広帯域で周波数をホッピングさせる技術である〔図4〕。一部の周波数で電波干渉が発生しても、移動した次の周波数では通信が回復し、電波干渉における障害を回避することができる。また、絶えず周波数を切り替え一定の周波数を占有しないため、他の無線局へ与える影響も限定的となる。
FHSSの構成 【図3 FHSSの構成】 周波数ホッピングイメージ 【図4 周波数ホッピングイメージ】
5-1-2.直接拡散(DSSS)
直接拡散(DSSS)は無線LAN(IEEE802.11b)や、IEEE802.15.4(ZigBee)等で採用されたスペクトラム拡散であり、送信側はQPSKなどの1次変調した信号に,PNコード等の拡散コード(PN符号)を乗積して送信する。一方受信側では、同じ拡散コードで逆拡散を行い、さらに復調処理を行う技術である。DSSSスペクトラム拡散波を〔図5〕に示す。
DSSSスペクトラム拡散波
【図5 スペクトラム拡散波】
この一連の処理において,ディジタル信号を非常に小さい電力で広い帯域に分散して送信を行うが、通信中に拡散された帯域の一部にノイズが局在した場合でも復元時にノイズが拡散されるため、干渉の影響が少ない〔図6〕。また、無線出力が小さくなるため、他の無線通信への干渉が小さいという特徴がある。
逆拡散による利得
【図6 逆拡散による利得】
〔図6〕に示した逆拡散による処理利得は(式8)で評価できる。
 
利得処理・・・・・(式8)
しかしながら、(式8)は、干渉波が処理利得分、希望波より大きい場合に処理装置が正常に通信することを意味する訳ではない。システムが干渉波の影響を受けて正常に通信する能力を示すには、妨害余裕度という別の概念を導入する必要がある。
妨害余裕度は、システムが正常に通信を行うために、必要な出力のSN比及び内部損失を考慮に入れて、次のように定義される。
 
妨害余裕度・・・・・(式9)

ここで、Lsysはシステムの内部損失であり、(S/N)outは出力情報のSN比である。 例えば、弊社のRFモジュールにおいては、無線周波数帯域幅(BWRF)=2MHz、情報速度(Rinfo)=250kbps 、1%パケットエラーレートでの(S/N)out =6dB (詳細はIEEE802.15.4参照)、これにシステムの内部損失Lsys =3dBを(式9)により計算すると(式10)となる。
妨害余裕度・・・・・(式10)
これは、逆拡散前の希望波と同一レベルの干渉波があっても、1%パケットエラーレートで通信可能であることを意味する。

5-1-3 RFリモコンに適した無線規格
いずれのスペクラム拡散技術も、電波干渉対策として有効であるが、リモコンの商品性として求められる即時送信性と電池寿命の観点から適した無線規格について検討する。
周波数ホッピング(FHSS)を用いたBluetoothの規格について検討すると、Bluetoothにおける低消費電力モードとして①パークモード、 ②ホールドモード、 ③スニフモード が設けられている。 しかし周波数ホッピングを行う都合上、少なくともマスタとスレーブは同期を維持しておく必要があり、いずれの低消費電力モードも電池駆動に適したレベルの待機電流にはならない。
また、同期維持を放棄して完全にスリープ状態にすることも可能であるが、同期の復帰に1~3s程度かかり即時送信性が失われる。リモコンの商品性を鑑みると周波数ホッピング(FHSS)を用いたBluetoothの規格は向いていない。
一方、 直接拡散(DSSS)を用いたIEEE802.15.4は、Bluetoothのように周波数ホッピングは行わない為、送信側と受信側が同期する必要がなくスリープ状態から復帰後、数十msで送受信可能となる。また待機電流は数uA程度と低い。
従って、直接拡散(DSSS)を用いたIEEE802.15.4の無線規格が、RFリモコンにとって適した無線規格といえる。
以上からIEEE802.15.4の規格を用いたRFリモコンを前提として電波干渉対策について述べる。
 

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