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【iPad向け】 SMKが独自のドッキングステーション製品化


優れたデザイン、独自の同期・充電機能
SMKは、米国関係会社SMK-Linkが開発したiPad用のPadDock 10(スピーカーと同期機能を持つDock)を2010年9月に米国、同年12月に日本で発表した。本製品は際立った工業デザイン、優れたスピーカーデザイン、そして独自の同期・充電機能を備えているのが特徴である。(写真1)
Appleが2010年4月にリリースしたiPadによって新しい製品カテゴリー、そして新しいアクセサリーを生み出すチャンスが生まれた。iPadはネットにワイヤレスで接続し、ポータブルデバイスを使ってネットサーフィン、音楽鑑賞、映画鑑賞、数千ものダウンロード可能なアプリケーションを使用したり、読書を行ったりする機能と優れたバッテリ寿命を併せ持っている。iPadのフレキシブルな機能により、多数のアプリケーションを使用することが可能だが、このようなユーザーをサポートするアクセサリーは発売時点ではそれほど多くなかった。
iPadは世界中の多くの国や言語に対応しており、2010年には概算で1400万台以上が販売されている。
従来、Appleの伝説的とも言える秘密主義から、iPad発売時に利用できるアクセサリーはほとんど存在していなかった。 Apple自身も発売時に全てのアクセサリーを揃えることができず、その後、数カ月にわたって段階的にリリースせざるを得なかった。iPadでは30ピンDockコネクタを使用するが、コネクタのサイズが通常のものと異なるため、市販されているアクセサリーは、iPadで使用するためにデザインを変更する必要があった。


PadDock
【写真1】PadDock 10
(iPad縦置き搭載)
iPhoneやiPod touchと比較してiPadのユニークな機能の1つが外付けキーボードを使用できることにある。AppleはコンビネーションキーボードとiPadをポートレート(縦長)ポジションに固定するためのDockを発売している。これによってユーザーにペーパーサイズのビューを提供することが可能になるが、多くのユーザーはコンピュータのランドスケープ(横長)表示に慣れている。iPadは標準的なBluetoothキーボードでも使用できるが、iPadをランドスケープ方向に固定するDockは存在しなかった。
iPodやiPhone用の多くのドックは音楽の再生用に最適化されたものが殆どである。一方で、SMKではiPadには異なるソリューションが必要であると認識し、よりコンピュータに近いデバイスとしてiPad用に特化した、単なるスピーカーシステム以上の機能を持ったDockが必要、と考えた。
Apple製品の多くの成功の理由の一つが、30ピンDockコネクタによる統合化である。Appleはベンダーに対して、Apple製品を彼らの製品から直接コントロールするためのシームレスな手段を提供するため、コネクタのライセンスを供与している。iPod、iPhoneそしてiPadの様々なモデルをサポートする製品群をラインナップすることによって、ユーザーは自分のニーズを満たせる製品を選ぶことができる。 SMK-LinkはAppleの30ピンコネクタのライセンスを正式に付与されている。

PadDock
【写真2】PadDock 10(単体)

工業デザイン

PadDock 10はカリフォルニア州カマリロにあるSMK-Link社がデザインした。PadDock 10ではミニコンピューターとしての使用を補完するようにデザインされている。IPad搭載したPadDock 10の外観や雰囲気は、Appleコンピュータの外観や雰囲気に合うように設計した。Appleデザインの特徴的な美学として、アルミニウムやガラスが多用されることが挙げられる。iPad自体も強固なアルミニウム製の筐体と大きなガラス製のスクリーンを組み合わせたデザインで、その美学に適っている。
PadDock 10ではiPadをデザインの核として使用し、スクリーンの下側にスピーカーを加えることによって同じデザイン上の美学をさらに強調している。スピーカーの前部にはiMacとマッチするよう、アルミニウム製のプレートが装着されており、PadDock 10本体のカラーリングもiPadにマッチするよう配慮されている。(写真2、3)。
PadDock
【写真3】PadDock 10(iPad横置き搭載と表示部)
また、形状や色だけでなく、ポートレートモードとランドスケープモードの切り替え機能を盛り込むことも重要である。映画などを鑑賞する場合には、ランドスケープモードが好まれるが、iOSプログラムの中にはポートレートモードでしか使用できないものがある。クレードルの背後にある丸いハブによってスクリーンを360°回転させ、90°ごとにロックさせることを可能とし、また、スクリーンを前後に傾斜させることによって最適な角度で視ることが出来るよう設計している(写真4)。
PadDock
【写真4】PadDock 10角度調整
PadDock
【写真5】PadDock 10裏面(iPad横置き搭載時)

スピーカデザイン

Dock Stationのスピーカーをデザインするにあたり、良好な音質とシームレスな外観の両方を実現することが重要な要素であった。IPadのスクリーンサイズとタッチインターフェイスから、一般的に映画を見たり、音楽を聴いたりする場合には、ユーザーは直接、手で操作できる範囲に座ることになる。一般的なスピーカーDockではスピーカーがリスナー側に直接音が聴こえるようにしているが、iPadユーザーは近い距離に座っているため、従来のデザインではステレオの左右チャンネルの分離に悪影響が出るおそれがある。
PadDock 10のスピーカーは、ユーザーとは逆方向を向いたデザインとしており、ユニットの背後の壁によって音を反響させるようにした。これによってステレオの左右のチャンネルの分離度が大幅に向上している。 (写真5)
PadDock 10では高エネルギーネオジム磁石を使用したカスタムデザインの楕円形 (40 mm × 55 mm) スピーカーによって全方向サウンドを実現している。また、独自のパッシブラジエーターによって豊かな低音が再現され、自然なフルレンジ音質を実現している。

同期および充電機能

PC上の標準的なUSBポートによりiPodやiPhoneの充電に対しては十分な電力を供給できるが、iPadの使用電力ははるかに大きいため、素早く充電するためにより大きな電力が必要となる。USBポートを使用する場合、iPadの充電には7時間以上かかる。AppleはiPad充電用に10Wの電源アダプタを用意しており、これを使用すれば、充電時間を50%短縮できることになる。
PCに接続すると、音楽、映画、アプリケーション、文書などをiPadに同期できる。しかし、iPadをコンピュータに接続すると、スクリーンの電源がオンになっている間はiPadの充電を行うことはできず、スクリーンの電源をオフにしても充電の速度は非常に遅いという問題がある。逆にApple電源アダプタを使用すれば、よりスピーディな充電を行えるものの、並行してファイルなどをiPadと同期することは出来ない。
この問題を解決するために、 PadDock 10では2つのモード間の切り替えを可能にしている。Chargeモードでは、電源アダプタで10Wの電力を供給し、これをスピーカーの使用とiPad充電とで共有し、SyncモードではiPadはPCのUSBポートに直接接続され、PCデータと同期を行える仕組みとしている(図1)。
PadDock10では、シンプルなスライドスイッチによって二つのモードの電気的な回路の切り替え操作を可能にしている。PadDock 10のmini USB ポートとPCのUSB ポートを接続することで同期を行い、電源ジャック端子からUSB電源アダプタを使って充電を行う、というものである。このように、ユーザーが混乱しないように、二つの異なる種類のコネクタを搭載している。
iPadをDockStationで使用することが殆どないユーザーにとっても、Pad Dock10は日々の問題を解決する優れたソリューションとなりえる。第1に、クレードルを使うことによって、ユーザーは未使用時にiPadを安全に保管することができる。第2に、PadDock 10ではAppleの電源を使用するため、最速の電源モードをサポートできる。第3に、PadDock 10は同期を可能とする唯一のDockであるためである。
【図1】 PadDock 10のブロックダイアグラム
PadDock

Bluetoothキーボードと組み合わせた使用

iPadとBluetoothキーボード、そしてPadDock 10を組み合わせて使用することによってiPadの機能性と有効性をさらに拡張することが可能となる。実際、ほぼ瞬時に起動し、ワイヤレスでインターネットに接続するiPadの機能はPadDock 10と組み合わせることによってネットサーフィンを行う場合に理想的である。また、キーボードと回転式Dockを使用することによって電子メール利用における生産性や操作性も大幅に向上できる。

ターゲット市場

もともと、PadDock 10は16歳から30歳までの若年成人層による寮やアパートなどの自分の部屋にあるデスクでの使用をターゲットとしていた。このような環境においては、iPadは動画ステーション、ゲームステーション、もしくはインターネットステーションとしての役割を求められるが、PadDock10との組み合わせによって快適な使い勝手を実現可能としている。
発売以来、そのユニークな機能から利用モデルが劇的に広がりを見せており、ウェブブラウザ及びワイヤレス機能を利用して、ビジネス・シーンでもiPadによる書類の作成から様々な機械・設備のコントロールに至るまで、生産性の向上に貢献する役割も果たすようになってきている。現在では、その用途は台所で料理をしながらのレシピの確認や、オフィス内での従業員の日常業務での使用など、多様化が進んでいる。

今後の計画

SMKとSMK-LinkはiPad用の PadDock 10スピーカーシステムの販売促進に注力している。開発を担当するSMK-Link社はApple社から30ピンコネクタのライセンスを取得しており、Apple iPadの現バージョン、そして次のバージョンにおいても革新的な製品を開発し続けていく予定である。


筆者:SMK-Link 
出典:電波新聞 2011年5月19日 特集「特別企画」