
エナジーハーベスティング搭載HarvestLoop®の技術とメリット
~電池交換不要の未来へ~
目次
1. HarvestLoopⓇ
世界初ソーラー充電とBluetoothⓇ機能を内蔵したCR2032コイン電池互換モジュール
画期的なエナジーハーベスティング技術を搭載した次世代コイン電池型モジュール「HarvestLoopⓇ」の改良版を2025年1月のCESで発表・出展しました。CR2032コイン電池と完全互換性を持ちながら、上面に高効率PVセル、BluetoothⓇモジュールを統合した革新的なデザインにより、様々な産業分野で電池交換の手間とコストを大幅に削減します。

2. エナジーハーベスティングが創る持続可能な未来
2.1 エナジーハーベスティングとは
エナジーハーベスティング(環境発電)技術は、周囲の光や熱、振動などの環境エネルギーを電気に変換する技術です。IoTデバイスの爆発的な普及に伴い、これらのデバイスへの持続可能な電力供給が社会的課題となる中、エナジーハーベスティングは「バッテリーレス社会」実現への鍵となる技術として注目されています。
特に、様々な発電方法の中でも熱発電や電磁波を利用した発電は、廃熱を有効活用し、環境負荷を低減させる重要な技術としてCESをはじめ各種展示会でも注目を集めています。これらの技術は半導体の発展と共に進化し、より高効率な伝送システムを実現しています。

2.2 将来的な応用と技術動向
将来的には、スマートフォンやウェアラブルデバイスへの応用も期待されており、無線通信技術との融合により、遠隔地からの電力モニタリングや制御が可能になります。キャパシタや高性能回路を活用した蓄電技術の向上により、不安定なエネルギー源からでも安定した電力供給が実現されつつあります。さらに、最新の技術動向では、アンテナ技術を活用した微弱電磁波からの発電システムの研究が進んでいます。
このようなエナジーハーベスティング技術の進化は、特に電源確保が課題となる分野に革命をもたらしています。産業用IoTセンサーの分野では、定期的なコイン電池交換が大きな運用コストとなっており、メンテナンスフリーの電源ソリューションへの需要が高まっています。これに応えるため、様々な企業が新たなソリューションの実験と開発に取り組んでおり、HarvestLoop🄬もこうした社会的ニーズを背景に誕生しました。
3. エナジーハーベスティングの最新動向と市場
エナジーハーベスティング市場規模は急速な拡大を続けており、2024年の7億570万米ドルから2033年には28億4,000万米ドルまで成長すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は8.8%から10%台で推移し、IoT、スマートビル、ウェアラブルデバイスが市場成長を牽引しています。

国内ではエナジーハーベスティングコンソーシアム(EHC)が標準化や実装ガイドを推進し、産学連携によるエナジーハーベスティング技術開発が活発化しています。経済産業省も関連政策でエナジーハーベスティングの普及を支援しており、カーボンニュートラル実現に向けた重要技術として位置付けられています。
エナジーハーベスティング学会や展示会では、CESやSmart Energy Weekで革新的なエナジーハーベスティング製品が多数発表されており、特にIoTセンサやウェアラブル向けの小型・高効率デバイスが注目を集めています。半導体技術の進歩により、エナジーハーベスティングキャパシタや回路、コンバータの性能向上が実現し、実用レベルの発電量を達成する製品が登場しています。
4. HarvestLoopⓇがもたらす自律型IoTの革新
4.1 PVセル一体型CR2032コイン電池互換モジュールの革新性
HarvestLoopⓇの最大の特徴は、標準的なCR2032コイン電池と同じ形状と電極構造を持ちながら、 上面に高効率PVセルを搭載しソーラー発電を可能にしている点です。これにより、従来のCR2032を使用している機器の上面を透明にするだけで、追加の配線や改修なしにエナジーハーベスティング技術を導入できます。
さらに、内蔵BluetoothⓇモジュールにより電力状況の監視やデータ通信が可能になり、IoTシステムとの親和性も高めています。

4.2 産業用途での活躍とベネフィット
現在、工場や物流施設などの産業現場では、多数のセンサーがCR2032などのコイン電池で駆動しており、その交換作業は大きな管理工数となっています。HarvestLoopⓇは、これらのセンサー用電源をそのまま置き換えることで以下の大きなメリットを提供します。

電池交換作業の排除によるメンテナンスコスト削減

電池切れによるデータ損失リスクの軽減

廃棄電池の削減による環境負荷の低減
すでに国内外の産業機械メーカーを中心に、インフラ、車載、農業、物流など多岐にわたる業界から引き合いがあり、特にセンサー用途での問合せを多くいただいています。
4.3 産業用途での具体的な活用事例
HarvestLoopⓇは、太陽電池セルによる電池交換不要の電源供給、BluetoothⓇ通信機能、各種センサーを組み合わせた総合的なIoTソリューションとして、以下のような具体例での活用が可能です。
温湿度センサーによる状態監視
工場内の環境モニタリング(太陽光発電とBluetoothⓇ通信により、電池交換レスでの長期間監視を実現)
加速度センサーによるアセットトラッキング
物流倉庫の在庫管理タグ(BluetoothⓇ通信による位置情報・振動状態の無線監視を電池交換なしで実現)
磁気センサーによるドア開閉検知
セキュリティドアの開閉履歴管理(太陽光発電により配線・電池交換レスでの開閉状態をBluetoothⓇ送信)
複合活用事例
インフラ設備の総合監視(電源の課題でIoT化が進んでいない分野への提案)
農業用環境センサー(太陽光を利用した発電方法により電池交換レスを実現)
特に注目を集めている応用例として、複数のセンサーを組み合わせた複合的な発電方法による産業用IoTソリューションがあります。回路設計の最適化により、従来は使用が難しかった環境でも安定した電力供給を実現します。
5. 開発の苦労と技術的ブレークスルー
HarvestLoopⓇの開発では、極めて限られたスペースに高効率なPVセル、充電回路、BluetoothⓇモジュールとセンサーを統合することが最大の技術的課題でした。特に、CR2032コイン電池と同じ形状を維持しつつ十分な発電率と蓄電能力を確保することが課題でした。この課題を克服するため、専用の超低消費電力ICに加え、バッテリーやPVセルといったキーパーツの選定においてシンプルな回路構成に挑戦しました。
様々な光環境下でも安定した動作を保証するために、微弱な光エネルギーでも効率的に電力を発電・蓄積できる回路を実現。半導体技術の進化を活かした超低消費電力設計により、わずかな環境エネルギーでも長時間動作が可能になりました。実験段階では、室内の蛍光灯下でも十分な発電性能を示しています。

6. HarvestLoopⓇの発展計画:用途に合わせたカスタマイズと次世代技術の融合
HarvestLoopⓇの発表以来、多様な業界からお問い合わせをいただいております。しかし現状の製品は小型設計のため発電効率に一定の制約があり、適用できる用途が限られているという課題があります。この課題に対応するため、弊社ではお客様の具体的なニーズに合わせたセミカスタムソリューションを提供し、センサーユニットやIoTデバイスを電池交換レスで運用できるよう設計提案し用途に最適化されたハードウェアとして商品化いたします。

さらに、より多様な環境での安定稼働を実現するため、PVセル以外のエナジーハーベスティング技術(振動、熱発電など)を組み合わせたハイブリッド型モジュールの研究開発も進めています。この複合技術により、光量の少ない環境や振動が発生する現場など、これまで対応が難しかった状況でも持続可能な電力供給を可能にし、応用範囲の拡大を目指しています。
用途拡大に向けては、ガスセンサーを組み込んだモジュールの開発により、工場の安全管理やスマートホームでの空気質監視など、より高度な環境センシングアプリケーションへの展開を想定しています。
FAQ
Q. どのくらい発電できますか?
A. 発電量は、光の明るさ(照度)によって大きく変わります。
・屋外の明るい場所(約5000ルクス)では、約200μAまで発電できます。
・一方、屋内の明るさ(約200ルクス)では、約10μA程度しか発電できません。
そのため、より多くの電力を得るには屋外での使用がおすすめです。屋内では発電量が非常に少ないため、超低消費電力のデバイスでの利用が前提となります。
Q. 電池残量ゼロからPVセルのみで満充電までにかかる時間はどのくらいですか?
A. 屋内 200 lux(10μA = 0.01mA)の場合: 400時間
屋外 5000 lux(200μA = 0.2mA)の場合: 20時間
Q. IoTセンサーではどんな用途に向いていますか?
A. 発電量が限られているため、電力消費が少ない用途に適しています。
たとえば以下のような使い方が向いています:
・設備の状態監視(異常があったときだけ通知)
・温度・湿度の測定
・ドアの開閉状態の検知
・物流タグ(位置や状態の簡易管理)
これらの用途では、Bluetooth®の送信間隔を長く設定できるため、少ない電力でも運用が可能です。
Q. 価格は?トータルコストはどう比較しますか?
A. 初期費用は、一般的な電池より高くなる傾向があります。
ですが、長期的に見ると、以下のようなコストを削減できるため、全体のコスト(TCO)では有利になることが期待されます。
・電池交換の手間や人件費
・機器停止による作業中断や損失
・使用済み電池の廃棄コスト
特に、センサーの数が多い現場や、人がアクセスしづらい場所では、メンテナンスの手間が減ることで、投資対効果(ROI)が高くなると期待されます。
Q. コンソーシアム/学会・展示会はどこを見れば良いですか?
A. 国内外で以下の情報源が参考になります。
・エネルギーハーベスティングコンソーシアム
・展示会:CES、Smart Energy Week
・学会:IEEE Sensors、エナジーハーベスティング関連シンポジウム
→最新動向や製品情報は公式サイトや展示会レポートをチェックしてください。
HarvestLoopⓇの特長
- CR2032完全互換の構造と電極配置(既存機器にそのまま使用可能)
- 低消費電力設計によるバッテリーの最適化
- 高効率エナジーハーベスティング技術による優れた光電変換効率(室内照明でも発電可能)
- 回路の簡素化による省スペース化の実現
- BluetoothⓇ連携機能による電力残量監視とパラメーター調整
HarvestLoopⓇは、持続可能なIoT社会の実現に向けた重要な一歩です。電池交換の手間をなくし、メンテナンスフリーで環境にも優しい次世代電源ソリューションとして、様々な分野での活用が期待されています。
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