コネクタ
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モバイル機器向けコネクタの技術展望

はじめに

携帯電話はPC機能を備え、スマートフォンとして進化する一方で、ノートPC、PDA等も通信機能を装備し、各モバイル機器の明確なカテゴリーが無くなり融合しつつある。さらに、各モバイル機器はDSC、カムコーダー機能など様々な機能を搭載し、多機能化、高機能化が進んでおり、単なるモバイル機器から“総合情報モバイル端末”として急速に進化している。一方、搭載されるコネクタにおいては、モバイル機器の新機能に対応した新製品が必要とされる他、多機能化・高機能化による搭載部品の増加や機器内ユニットの複雑化に伴い、従来以上の小型化、軽量化、そして高機能化が求められている。これらの状況を踏まえSMKでは、モバイル機器用コネクタのトータルソリューションを提供できる様、製品開発を行うと共に各コネクタのレパートリー拡充を図っている。
本稿では①メモリカードコネクタ②カメラモジュールソケット③FPC、基板対基板コネクタ④I/Oコネクタ⑤同軸コネクタに絞り、最新製品を紹介しながら、今後の技術展望について述べる。

メモリーカードコネクタ

モバイル機器の小型化を受け、ストレージ用としてはmicroSDカードの採用が増加している。また、通信機能のID認証用としては、従来から携帯電話でも使用されているSIM(UIM)カードが搭載されている。一方、セット側の搭載カードの増加により、対応するコネクタの基板占有面積の抑制が課題となっており、個々のコネクタの小型化に加え、各カードスロットを1つのコネクタに集約した複合タイプの開発が重要となっている。
microSDカード用コネクタ製品【 写真1 microSDカード用コネクタ製品】
<写真1>はmicroSDカード用コネクタの製品レパートリーである。<写真1左>は高さ1.5mmのHingeタイプで、シールドカバーの回転及びスライドにより、カードの脱着が可能で、コネクタ実装面積内でのカード操作を可能としている。
<写真1中左・右>はPush-Pullタイプである。セットの用途に合わせ、カード検知用スイッチの有無、カードロック方式(ハーフロック、ハードロック)を選択できる。また、高さ1.47mmの製品も開発済みであり、省実装面積でありながら薄型化にも対応している。
<写真1右>はmicroSDとSIMカードに対応し、各スロットをスタッキング化させた2スロットタイプの複合カードコネクタである。個々のコネクタを実装した場合と比較して、約30%の実装面積低減を達成している。microSDカード部には、奥行きを抑制させたヘッダータイプ構造を採用し、カード操作時のグリップ範囲を充分に確保すると共に、コネクタ面積内でカード挿抜が可能な構造となっている。
SIMカード部においては、カード長手方向からの挿入(横挿し)にて操作が可能となっているが、横挿しで懸念される端子座屈や誤挿入に対してFail-Safe構造を装備している。

カメラモジュールソケット

カメラモジュールソケット【写真2 カメラモジュールソケット】
SMIA規格、FORM6規格準拠品をはじめとする様々なカメラモジュールが開発されている。一方ではモバイル機器の薄型化に伴い、カメラ機能部分の厚みがセット厚みの設定に大きく影響してきている。このためカメラモジュールソケットについては、一段のレパートリー拡充と小型化が求められている。
<写真2左>がSMIA95規格準拠ソケット(SIMA65、85も開発済み)、<写真2右>がFORM6規格準拠ソケットである。各ソケットにはカメラモジュールを確実に保持できる独自のダブルロック構造(特許保有)と、モジュール底面部と接続するコンタクト下接点構造を採用し、モジュール側のばらつきを吸収すると共に、衝撃に対して高い接触信頼性を確保できる構造を実現している<図1>。
カメラモジュールを受けるソケット底面部高さは0.6mmから0.3mmへと、さらに低背化を図ったものを製品化している。
ソケット全体を金属プレートで覆うと共に、グランド設置構造を考慮することで、シールド特性を向上させている。
カメラモジュールソケット構造図【図1 カメラモジュールソケット構造】

FPC、基板対基板コネクタ

FPC BtoBコネクタ【写真3 FPC、基板対基板コネクタ】
機器内ユニットと基板接続の複雑化やセットの小型・薄型化により、FPCコネクタや基板対基板コネクタには①狭ピッチ化②低背化③結線作業性向上(実装後)が、共通キーワードとして強く求められている。
【FPCコネクタ】<写真3左>が結線作業性と接触信頼性を向上させた0.3mmピッチFPCコネクタである(写真は上接点)。実装高さは業界最薄の0.85mmで、従来比35%減の低背化を実現している。
FPCの固定には、カム機構を備えた金属レバーを回転することで容易にスライダを摺動させ、FPCを確実にロックできるイージーフリップロック方式(特許保有)を採用している。FPC挿入時はZIF(Zero Insertion Force)構造となっているが、スライダ摺動後は回転した金属レバーで完全固定されるため、結線作業性の向上と高い接触信頼性を両立している。
その他、高速伝送に対応した0.3mmピッチ、実装高さ0.8mmのEN-32シリーズを開発済みで、FPCコネクタのアドバンテージを維持したまま、極細同軸コネクタと同等の伝送特性を実現し、セット設計の自由度向上に貢献している<写真3中>。
【基板対基板コネクタ】<写真3右>が省スペース化を図った0.4mmピッチ基板対基板コネクタである。プラグとソケットの嵌合高さは、超低背の0.7mmとなっている。また、幅寸法は3.3mmを実現し、業界最小サイズを達成している。
小型化による耐こじり性能の低下に関しては、コネクタの基板取り付け部に、独自考案のハーフロック機能を有した補強金具を設置することで、挿入感を向上させると共に、こじり強度の強化を図っている。また、更なる省スペース化を狙い、0.35mmピッチ品も開発済みであり、レパートリーの拡充を図っている。

I/Oコネクタ

小型、薄型化が必要とされる一方で、従来同等以上の剛性、強度が求められている。製品ラインナップとしては、セットの薄型化へ貢献できる、基板を切り欠いた部分に実装可能なミッドマウントタイプの拡充に注力している。ミッドマウントタイプでは、ユーザー操作時に懸念される、こじり及び落下衝撃に対して独自のシェル構造及びセット筺体を活用した保持構造を採用し、各耐性の向上を図っている。
従来は、充電、データ通信及びイヤホン用など、用途毎にコネクタを用意する必要があったが、1つのコネクタに各機能を集約させることで、コネクタ搭載数を削減させ、モバイル機器の省スペース化及び軽量化に寄与している。
<写真4>は、高速伝送及び充電対応用のUSB規格に準拠したMicro-USBコネクタである。これまでの開発で培ってきたI/Oコネクタ技術を活用した独自のシェル構造により、耐衝撃・耐こじり性能に関して堅牢化を図っている。その他、USB3.0規格、HDMI規格など各規格に準拠したコネクタを開発している。
Micro-USBコネクタ 【写真4 USB規格準拠のMicro-USBコネクタ】

同軸コネクタ

同軸コネクタにも広帯域化と、より一層のダウンサイジングが求められている。
<写真5左>がDC~6GHz対応の出力検査用同軸コネクタ(スイッチ付き)である。
高さ0.95mm(従来比36%減)、基板占有面積2.4×2.4mm(従来比44%減)、重さ 0.014g(従来比44%減)となっており、業界最小・最軽量クラスである。
プラグ挿入時のこじり強度に関しては、シェルに継ぎ目を無くした一体構造を採用すると共にコネクタ両サイド全面にリード部を設け、製品強度と基板との接続強度、信頼性を高めている。また、ハウジング上面にφ2mmの平坦な吸着面を確保し、自動実装効率や位置決め精度を向上させている。プラグにはハーフロック機能を備えた自立嵌合タイプと挿抜耐久性を考慮したプローブタイプを用意し、セットの開発から量産までの検査体制をサポートできるようにしている。
<写真5右>は機器内配線用超小型同軸コネクタである。プラグとレセプタクルの嵌合高さは1.0mm(従来比28%減)、レセプタクル基板占有面積1.85×1.95mmであり、機器内の占有スペース確保に貢献している。
また、プラグの適合ケーブルは外径φ0.46mm、φ0.64mmの2種類の極細同軸ケーブルに対応しており、機器内のケーブル引き回しが容易に行えるのも特長である。
同軸コネクタ 【写真5 同軸コネクタ】

今後の展望

<今後も各モバイル機器へ貢献できる様、下記2点の技術へ重点的に取組み、高度化させながら製品開発を進めていく。
【1.高速伝送技術】
大容量データの送受信や保存・再生が各モバイル機器に必要とされるため、高速信号伝送に対応したコネクタや、広帯域対応の同軸コネクタが必須となる。
当社ではHDMI、USB2.0等で培った差動伝送技術や高周波技術を駆使すると共に、3次元電磁界シミュレーション技術と評価・解析技術を活用し、要求されるコネクタをいち早く開発していく。
さらに、搭載機器の小型、薄型化及びデータ送受信量の増加で重要性が増してくる瞬断対策についても開発を強化していく。
【2.反り変形低減技術】
コネクタ自身の小型化、軽薄化に伴い、従来以上に樹脂成形品の反り(初期変形)及び、リフロー実装時におけるコネクタ全体の反り変形の影響が顕著になっており、反り低減技術が重要となっている。
当社では、3Dモデルを活用した流動解析、反り解析等のデータと蓄積技術を基に、最適製品形状や選定材料を決定している。
また、製品化されたものについては、リフロー温度変化時の反り変形状態をリアルタムに評価し、詳細状態を捉え解析することで、製品改良に結び付けている。今後も本技術の蓄積と改良を図り、各状態での反り変形を最小限に抑制した製品を開発していく。


筆者:SMK CS事業部設計部 
出典:電波新聞 2009年7月1日 「電子部品技術特集」

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