コネクタ
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車載用機器向けコネクタの技術

はじめに

近年、国内外で広がるデジタル衛星ラジオ放送サービス、ITSサービス、地上波デジタル放送対応など、カーエレクトロニクスの発展により最先端の情報通信技術を用いた車載ネットワーク活性化が進んでおり、それに伴い車載用情報通信機器の需要が市場で拡大している。
これらの情報通信機器に使用されるアンテナから機器間への接続には、同軸コネクタが必要となるが、機器の安定した動作に対する信頼性から、使用される同軸コネクタには良好な周波数特性や機械的強度の確保が重要とされている。その中において、車載用情報通信機器の多機能・高機能・小型化も進んでおり、使用されるコネクタに対しても小型・省スペース・高性能化の要求が以前に増して著しい。その中で、当社では使用用途やニーズに合わせて、車載機器用同軸コネクタ開発を推進してきた。
本稿では、機器とアンテナ間を接続する為の車載用同軸コネクタにおける開発ポイントと当社開発製品の中よりVCシリーズ、TC-15シリーズ、VR-1シリーズの概要に関し、紹介する。

<機器-アンテナ接続用 同軸コネクタに関して>

主な使用用途としては、機器とアンテナ間を接続する為のコネクタであり、機器に搭載されている基板側に実装されるコネクタと、アンテナと接続する為のケーブル付きコネクタにて構成されている。
コネクタ間の接続(嵌合)は、自動車走行中の振動や厳しい環境変化においても、接触信頼性を考慮し、フルロック方式が採用されている事が主である。

<開発のポイント>

機器の小型・省スペース化に対する部品の役割は大きく、基板上における占有面積や製品サイズの制約が大きい中、その一方では小型・省スペース化を進めていく場合でも機械的強度、電気的性能(高周波性能)、組立作業性等においては、従来品より向上、もしくは同等レベルである必要性があり、あらゆる面で信頼性のある構造設計が要求されている。
1)小型化と機械的強度
コネクタの小型・省スペース化を図ると、成形品の肉厚や金属材料の厚み等が薄くなり、実使用上、基板剥離強度やこじり強度などの機械的強度が低下することが考えられる。その為、応力が集中する可能性がある箇所の補強、分散及び部品形状の工夫やモールドの薄肉化を補う金属部の配置等、機械的強度を確保できる構造を検討し、限られたスペース内での最適な形状、大きさ、位置を設計する必要がある。又、本製品は高周波部品の為、強度だけでなく高周波特性を考慮した構造や材質の選定もポイントと一つとなる。
2)高周波性能(広帯域化)
同軸コネクタの良好な高周波性能(広帯域化)を実現させるには、コネクタ伝送部、嵌合部、接続部(基板部・ケーブル結線部)の整合性を図る必要がある。特に同軸ケーブルとの結線を行う部分は重要なポイントであり、接続強度を重視すると高周波性能が劣化し、高周波性能を重視するとケーブル接続強度が低下するという、相反する関係がある。その為、ケーブル接続強度と高周波性能の両方を満足する適切な設定をする必要があり、当社他製品の技術蓄積の活用、試作段階からの構造、形状、寸法、材質の検討を実施し、不整合を極限まで削減して最適化を図り、RF性能の向上、広帯域化を実現させている。
また、シミュレーション技術の活用により設計の妥当性、適正確認も開発初期段階で行う事ができ、早期設計・開発期間の短縮にもつながっている。
3)組立の作業性・安定性
ケーブル側コネクタは、主に得意先ラインでの組立となる為、シンプルな組立方法となる様な構造と部品形状を考え、組立工数の低減と工程能力の向上に貢献している。同軸ケーブル結線方法は、中心導体、外部導体共に組立信頼性を考慮し、圧着、加締め方式を採用し、優れた作業性を実現している。

<SMK車載用同軸コネクタの紹介>

先に述べた開発ポイントに基づき、設計を行い、製品化した車載用同軸コネクタについて以下に 紹介する。
1)VCシリーズ
VCシリーズは、SMB(Sub Miniature Type B)をベースにプッシュオンのモールドロック方式を採用し、デジタル衛星ラジオ、携帯電話(GSM)、GPS、TV、カーナビゲーションなどの 50Ω系機器向けに開発し、振動などに強く、完全な結合が可能な車載用同軸コネクタである。 シングル、ツインタイプ等、多彩なレパートリ-を拡充しており、使用周波数もDC~3GHz、DC~4GHz、DC~6GHzに対応し高整合で良好な高周波特性を備えている。(表1、図1参照)
VCシリーズレパートリ(一例)
【 図1 VCシリーズレパートリ(一例)】
【表1 VCシリーズ、TC-15 シリーズ、VR-1シリーズの主な仕様】
シリーズ名VCシリーズ
タイプ基板用プラグケーブルプラグケーブルジャック
シングル
(SMT)
シングル
ピンイン
ペースト
シングル
(DIP)
ツイン
(DIP)
1.5D
タイプ
2.5D
タイプ
RGタイプブラケット
付き
0.8D
タイプ
1.5D
タイプ
2.5D
タイプ
RGタイプ
定格電圧
・電流
AC250V, 1A AC250V, 1AAC250V, 1A
インピーダンス50Ω 50Ω50Ω
周波数範囲DC~
6.0GHz
DC~
4.0GHz
DC~
4.0GHz
DC~
4.0GHz
DC~
6.0GHz
DC~
6.0GHz
DC~
3.0GHz
DC~
3.0GHz
DC~
3.0GHz
DC~
6.0GHz
DC~
6.0GHz
DC~
3.0GHz
V.S.W.R.1.3以下
(DC~
3.0GHz)
1.5以下
(3.0~
6.0GHz)
1.3以下
(DC~
4.0GHz)
1.3以下
(DC~
4.0GHz)
1.3以下
(DC~
4.0GHz)
1.3以下
(DC~
3.0GHz)
1.5以下
(3.0~
6.0GHz)
1.3以下
(DC~
3.0GHz)
1.5以下
(3.0~
6.0GHz)
1.3以下
(DC~
3.0GHz)
1.3以下
(DC~
3.0GHz)
1.3以下
(DC~
3.0GHz)
1.3以下
(DC~
3.0GHz)
1.5以下
(3.0~
6.0GHz)
1.3以下
(DC~
3.0GHz)
1.5以下
(3.0~
6.0GHz)
1.3以下
(DC~
3.0GHz)

シリーズ名TC-15シリーズ シリーズ名VR-1シリーズ
タイプレセプタクル
(SMT)
レセプタクル
(エッジマウントタイプ)
プラグレセプタクル
(エッジマウント75Ωタイプ)
プラグ
(75Ωタイプ)
タイプレセプタクル
シングル
レセプタクル
ツイン
プラグ
定格電圧・電流AC250V, 1A AC250V, 1A定格電圧・電流AC250V, 1A
インピーダンス50Ω 75Ωインピーダンス75Ω
周波数範囲DC~6.0GHzDC~0.8GHz周波数範囲DC~1.0GHz
V.S.W.R.1.5以下
(3.0~6.0GHz)
1.5以下
(DC~0.8GHz)
V.S.W.R.1.5以下
(DC~1.0GHz)

①基板用プラグ
基板用プラグはSMTタイプとDIPタイプがあり、SMTタイプのシールドケースの基板実装は、 ピンインペーストを採用しており、こじり強度の確保や実装高さの低減を考慮した構造となっている。DIPタイプは、シールドケース部を含む全ての端子がフロー半田付けされ、基板との接続信頼性やこじり強度に関して、更に優れた構造となっている。
②ケーブル付きタイプ(ケーブルジャック、ケーブルプラグ)
ケーブル付タイプは、コネクタの種類により0.8D~2.5Dケーブル及びRG174に適合し、 幅広く対応している。 その他、取り付け方法の多様化に対応したケーブルプラグ(ブラケット付)は、ブラケットを設けることで、セットや筺体のシャーシなどに、プラグ部分を直接取り付けることができ、セット内の配線が容易に行える。ブラケットの方向は4方向に取り付けが可能である。(図2参照)
ケーブルプラグ(ブラケット付き)シャーシ取り付けイメージ
【 図2 ケーブルプラグ(ブラケット付き)シャーシ取り付けイメージ(一例)】
2)TC-15シリーズ
TC-15シリーズは、プラグとレセプタクルの嵌合方式にメタルロック方式を採用し、ETC車載器とアンテナの接続用に開発した、業界最小クラスの同軸コネクタである。 従来、車載機器向けコネクタにおいては、プラグとレセプタクルの嵌合方式はモールドロック方式が一般的であったが、ロック構造を金属にすることにより薄肉化、小型化を図っており、嵌合ロック強度、ケーブル接続強度共に高い機械的強度を有している。又、使用周波数範囲はDC~6GHz帯(50Ωタイプ)までをカバーしており高整合で良好な高周波性能を有している。 更に、レパートリーの拡充により、カーナビゲーション・カーTV向けとして、地上デジタル放送対応が可能なインピーダンス75Ωタイプの商品化も行っている。(表1、写真1参照)
TC-15シリーズ
【 写真1 TC-15シリーズ】
①レセプタクル
レセプタクルはSMTタイプとエッジマウントタイプの2種類があり、SMTタイプの製品寸法は、幅9.5mm×奥行11.3mm×高さ6.5mm、エッジマウントタイプの製品寸法は、幅12mm×奥行11mm×高さ6.0mm(基板上高さ4.5mm)であり、両タイプ共に小型・低背化で、ETC車載器の小型化・薄型化に貢献している。 又、レセプタクルはエンボステープ供給による自動実装に対応している。
②プラグ
プラグのレセプタクルへの嵌合(挿入)については、レセプタクルの開口部に対し、プラグを180度反転しても挿入可能な構造としたことで、操作性に配慮している。又、レセプタクルとの着脱は、プラグの両サイドのプッシュレバーを押しながら抜去するのでロック解除方法が明瞭で、狭いスペースでの取り外しも容易に行える構造である。
3)VR-1シリーズ
VR-1シリーズは、プッシュオンのモールドロック方式を採用し、地上波デジタルチューナーとアンテナの接続に開発した75Ωタイプの小型同軸コネクタである。基板用レセプタクル(2極タイプ)は、基板高さ9.7mm×奥行13.9mm×幅15.5mmと、2極使用時における小型化を実現し、基板の省スペース化と機器の小型化に貢献している。レセプタクルは、フルシールド構造でノイズ対策を図り、DC~1GHzまで高整合で良好な高周波性能を有している。 (表1、写真2参照)
VR-1シリーズ
【 写真2 VR-1シリーズ】

今後の展望

カーエレクトロニクス市場に限らず、情報通信の発展に伴い、あらゆる電子機器の小型、軽量、薄型化や高周波数化の流れは今後も進んでいく傾向にあると考えられる。 当社はこれまで同軸コネクタの開発で培った経験、技術を活かし、かつ新しい技術も積極的に取り入れた総合的な高度技術により、更なる広帯域化に対応した高性能、小型、薄型化の製品開発を推進し、市場ニーズに合わせたコネクタの提案を行っていきたい。


SMK株式会社 CS事業部 
出典:電波新聞 2010年4月8日 特集「自動車用部品技術」
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