コネクタ
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メモリーカード用コネクタ技術

はじめに

スマートフォンおよび、タブレットPCなどの高機能携帯端末において、メモリカードスロットを搭載した製品の増加が顕著である。メモリカードとしては従来からあるSIMカードに加え、超小型サイズのmicroSIM(Mini-UICC)およびmicroSDカードが採用されており、各機器の高機能化の1つとして、これらのスロット(コネクタ)を搭載している。SMKでは、このような市場動向を踏まえ、高機能携帯端末向けメモリカード用コネクタの開発に注力している。本稿ではSIM、microSIM、microSDカードに対応したコネクタに焦点を当て、開発に際して重要となる技術動向に加え、各開発状況を紹介する。

技術動向

【1.省スペース化】
各機器の薄型、高密度実装化に伴い、省スペース化を狙ったコネクタの開発に注力している。特に基板占有面積の抑制に対する取り組みが喫緊である。図1に示すように、単体コネクタでは信号端子およびシールドカバーのはんだ付け部をコネクタ内部に配置し、基板占有面積を低減させている。HEADERタイプにおいては。コネクタ高さを確保する必要があるが、奥行き寸法を抑制するとともに、カード下部に他部品の実装スペースを設け、高密度実装に貢献できる構造としている。一方、COMBO(複合)タイプにおいては、各スロットを積み上げる「スタッキング構造」にすることに加え、上段に配置されるカードに関しては、コネクタ実装面積内で挿抜可能な構造とすることで、カード操作スペースも含め省スペース化を図っている。
省スペース構造
【図1 省スペース構造】

【2.カードイジェクト方式の多様化】
カードイジェクト方式としては、PUSH-PUSHタイプが主流となっていたが、機器の多様化、小型化および低コスト化の流れを受け、<B> 図2に示すようなTRAYタイプおよびHINGEタイプなどの簡易イジェクト構造を備えたコネクタの開発にも注力している。また、イジェクト構造を持たないが、マニュアル挿抜のPUSH-PULL構造についてもレパートリー拡充を図っている。
カードイジェクト方式
【図2 カード用イジェクト方式】

製品紹介

【1.microSIMカード用コネクタ】<写真1>
microSIMカード用コネクタ
【 写真1 microSIMカード用コネクタ】
①PUSH-PUSHタイプ<写真1-左>
高さ1.3mmの低背タイプでありながらカード検知スイッチ機能を備え、カードイジェクト量も3.0mm確保している。独自のダブルカム構造を考案したことでカードの誤挿入防止、イジェクト時のカード抜け落ち防止に加え、嵌合時に機能するカードロック機構が装備されており、各使用状態においてフェイルセーフを達成している。
またmicroSDカードの誤挿入に対しても対策されており、端子保護(座屈防止)はもちろんのこと、カードイジェクトが可能な構造である。
②PUSH-PULLタイプ
写真1-中は、高さ1.3mm/幅13mm/奥行き15mmで低背、小型タイプである。信号端子は高接点荷重設定に加え、ダブル接点構造とすることで安定した接触を確保している。カードの誤挿入に対してはPUSH-PUSHタイプと同様、microSIMカード以外にmicroSDカードについても対策が講じられている。
また写真1-右のカード検知スイッチ機能付き(高さ1.3mm/幅13.7mm/奥行き15.65mm)もラインアップしており、各用途、機器設計に対応可能である。
【2.SIMカード用コネクタ】<写真2>
SIMカード用コネクタ
【 写真2 SIMカード用コネクタ】

①PUSH-PUSHタイプ<写真2-左>
高さ1.4mm/幅17.2mm/奥行き25.8mmと同タイプにおいて、最低背・省スペースである。シールドカバーには8箇所のグランド部(実装部)を設け、シールド性と堅牢性を高めている。また、カード検知スイッチには2点接触構造を採用するとともに、誤挿入時には動作しない構造とすることで、接触信頼性とスイッチ機能の向上を図っている。
②PUSH-PULLタイプ<写真2-中左>
カード検知スイッチ付きでありながら、高さ1.3mm/幅16.65mm/奥行き18.7mm と低背、省実装面積構造である。信号端子にはダブル接点構造を採用することに加え、接点荷重設定を同タイプの既存品と比較して1.5倍以上にすることで、安定した接触を実現している。
③MID-MOUNTタイプ<写真2-中右>
MID-MOUNT構造を採用することで、取り付け基板に対して「Zero-Height」を達成している。本タイプではカード操作時に不意な外力がコネクタへ加わることが懸念されるが、各信号端子の固定部およびはんだ付け部に衝撃吸収構造を採用し、対策を講じている。
④SIDE-ENTRYタイプ<写真2-右>
高さ1.45mmで同タイプとしては最低背クラスである。独自のY型信号端子を考案したことで、カード傾斜挿入を含め、あらゆる方向からのカード挿入に対して端子変形・破損を防止できるフェイルセーフ構造を達成している。

【3.microSDカード用コネクタ】<写真3>
microSDカード用コネクタ
【写真3 microSDカード用コネクタ】

①HEADERタイプ<写真3-上段>
高さ2.45mmから5.25mmまでをラインアップし、各セット設計に柔軟に対応可能である。また独自の「Scalable Height構造」により、高さ違い品においても金型および、組み立てラインの共有化が図られ、開発リードタイム短縮とコストミニマム開発を可能としている。
本タイプではカードこじり操作によるコネクタ破損が懸念されるが、カード検知スイッチの小型化を達成したことで、シールドカバーの各コーナーに十分なホールドダウン(はんだ付け)エリアを設け、堅牢性を高めている。
②PUSH-PULLタイプ<写真3-下段中>
カード検知スイッチ付きでありながら、高さ1.3mm/幅11.35mm/奥行き11.25mmと低背、省実装面積タイプである。カード検知スイッチには2点接触構造を採用し、接触信頼性を確保している。
また、シールドカバーと一体で形成されたハーフロック構造を備え、カードの操作性とカード嵌合時の保持機能を高めている。
③HINGEタイプ<写真3-下段右>
本タイプとしては高さ1.45mmで最低背クラスである。スライド、回転可能なシールドカバーは、嵌合時に4箇所のグランド設置が可能で、シールド性を高めている。またスライド位置に応じてクリック感を発生させ、ユーザーフレンドリーなコネクタ構造となっている。

【4.COMBO(複合)カード用コネクタ】<写真4>
COMBOカード用コネクタ
【 写真4 COMBOカード用コネクタ】
①microSD+SIMカード用一体タイプ<写真4-上段>
SIMカードスロット部にmicroSDスロット部をスタックアップさせることで、基板占有面積を大幅に低減している。外形サイズは高さ3.3mm/幅30.15mm/奥行き14mmである。
microSDカードスロット部をHEADER構造としたことで、SIMカードスロット上部においてmicroSDカードの完全操作が可能となり、操作領域を含めコネクタの省スペース化を達成している。
一方、SIMカードスロット部においてはSIDE-ENTRY方式を採用しているが、単体コネクタ同様に信号端子の座屈防止に加え、カード誤挿入に関して対策が施されている。
②microSD/SIMカード用2ピースタイプ<写真4-下段>
セット設計の多様化に伴いカード操作方向についても多様化が求められるが、前述の一体タイプではカード操作方向が一義的に決まってしまう。そこで、簡易的に各単体コネクタを立体的に組合せる2ピース構造によって、カード操作方向に対して可変性を持たせるとともに、小型・省スペースに貢献できる複合化を行っている。
写真4-下段は組み合わせの一例であり、各セット設計に対して容易に対応可能なことが分かる。
この他、microSIMおよび、microSDカード用コネクタについても同様な開発を進めている。

今後の展開

上記開発製品のレパートリー拡充の他、以下2点に注力し、メモリーカード用コネクタの開発を展開していく。
①PUSH-PUSHイジェクト機構に代わる簡易構造を持った機構を考案し、操作性を向上させながらさらなる小型化、廉価化を図り、セット設計に貢献できる高機能コネクタを開発する。
②② 大容量・高速伝送化するカードへ対応するために、インターフェイスコネクタ開発などで培った当社の高速伝送に関するノウハウを活用し、伝送特性を高めたコネクタを開発する。

筆者:SMK株式会社 CS事業部 
出典:電波新聞 2012年2月2日 特集「メモリーカード用コネクタ技術」

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