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リモコン用RFモジュールの技術

IRリモコンとRFリモコン

従来のリモコンはIR(Infrared:赤外線)通信に38kHzキャリアを用いて100msフレーム周期で通信するのが一般的であった。しかし、IRリモコンは、TVに向けないと操作できない、STB(Set Top Box)などの場合、AVラックの中などに受信部分があると、リモコンが効かないことがある、フレーム周期が長いためレスポンスが遅い、大きなデータが送れない、といった弱点があった。RF(Radio Frequency)通信は、それらの弱点を解消し、かつさらに多くの付加価値をもたらす通信方法である。
RF通信の仕様はSubGHz帯、2.4GHz帯を利用した(WorldWideでは2.4GHz帯)、様々な仕様が策定されている。その中で、リモコンに最適な仕様の模索を続けているが、最近リモコンに適する仕様がいくつか出てきた。普及が進んでいるZigBee® RF4CE(以下RF4CE)以外に、新たにBluetooth®(以下Bluetooth) , Wi-Fi Direct™(以下Wi-Fi Direct) といったものが増加傾向にある。以下にこれらの紹介をする。
RF通信の各種方式
【図1】RF通信の各種方式

RF4CE

RF4CEは無線リモコンの業界標準を目指して策定された無線通信規格である。
RF4CEはIRとほぼ同等の性能をRFで実現させた上、さらにRFならではのメリットを実現したものである。IRからRF4CEに変えることのメリットは、無指向性と長い到達距離、そしてデータ転送速度が速いということである。 転送速度はIRリモコンの約10倍であるため、送信に必要な時間が短時間で済み、高フレームレートで送ることが可能である。
タッチパネルや、モーションセンサーなどはフレームレートを高くする必要があり、IRでは実現が困難であったが、RF4CEなら滑らかな動きが実現できる。また、通常のキーデータ送信でも送信時間が短時間で済むことから、電池の消耗を抑えることが可能になった。

RF4CEモジュールの場合、RFモジュールをコントロールするための大規模なシステムは不要であり、ホスト側も含めたリモコンシステム全体で考えれば、開発要素が少なく、認証も含めて、コストを抑えることができる。
SMKではRF4CEモジュールを2010年から商品化している。また、高出力のRF4CEモジュールをというリクエストに応え10mWモジュールを開発し、実力到達距離を10~20mから100mまで延ばすことを可能にしている。(写真1)
【写真1】
FD0001シリーズ
RFモジュール


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Bluetooth


最近耳にするBluetooth Smart は、Bluetoothの統括団体であるBluetooth Special Interest Group (Bluetooth SIG) が定めた名称で、省電力Bluetooth 4.0= Bluetooth low energy対応製品につけるロゴのことである。Bluetooth low energy(以下BLE)は、ボタン電池で数か月から数年間の動作を可能にする超低消費電力に特化した通信技術である(写真2)。一度に送受信が出来るデータ量は27byteまでと非常に少ない上、通信速度(1Mbps)を重視していない代わりに、省電力性に特化した規格である。
低消費電力で電池駆動寿命が長いということで、腕時計・心拍計・小型センサーなどの電池駆動機器、血圧計・体重計などのヘルス関連機器と、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末とを接続し、データを収集し管理できるようになると考えられる。SMKでは、Bluetooth では、Bluetooth3.0+EDR規格のマイク付きリモコンを開発し、ヘッド・セット・プロファイル(HSP)による音声伝送を実現させている。ただし、低消費電力を目指し、BLE(リモコンコード送信)とBluetooth(HSP)との混在をさせると、システムが複雑化する可能性がある。そういった時には、次節でのWi-Fi Directを採用するメリットがある。
【写真2】
Bluetooth Low Energy
対応モジュール


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Wi-Fi Direct

Wi-Fi Directは、Wi-Fiに代表される無線LANの普及促進団体、Wi-Fiアライアンスが策定した仕様である。2010年10月から、このWi-Fi Direct対応機器の認証がWi-Fiアライアンスによって開始されている。この認証ではCPUメーカーのインテル、通信チップメーカーのAtheros、Broadcomなどが認定を受けている。また、Windows 8には標準でドライバーが組み込まれ、Android(4.0以降)でも、Linuxでもサポートされている。パソコンやスマートフォン、タブレットなどで、この機能に対応した機器が登場し始めている。従来のWi-Fiネットワークは無線アクセスポイントやルーターを介して機器同士が接続するが、Wi-Fi Directはアクセスポイントを必要とせずに、無線LAN搭載の携帯電話、タブレット、パソコン、デジタルカメラ、プリンタ、携帯用ゲーム機などのデバイス同士を直接に無線接続することができる。例えば、これまで携帯電話では、1対1通信といえば赤外線やBluetoothによるものが一般的だったが、Wi-Fi Directが取って代わる可能性が出てきた。
通信速度は54Mbpsでの高速通信が可能になる。この通信スピードならば音声等のストリーミングデータの送受信が可能となる。リモコンに応用すると、リモコンにマイクを内蔵し、音声をTV、STB等に伝送することで、クラウドベースの音声認識が可能になる。
ただし、Wi-Fi認証取得等の開発負担が大きいため、音声ストリーミング等のデータ送信を行う用途のリモコンの場合はWi-Fi Directが採用され、タッチパネル、モーションセンサーだけが必要なリモコンの場合はRF4CEが採用されるようになり、用途により方式が分かれていくと思われる。

Wi-Fi Directの可能性


このWi-Fi Directが今回挙げた他の2つの通信規格と大きく違う点がある。それは、自分がアクセスポイント、またはルーターになり得る点である。つまり、1つのリモコンで複数の機器と接続、コントロールが可能となることである。また、レガシーWi-Fi装置との接続も可能であるので、リモコンを介して、レガシーWi-Fiデバイス同士がやり取りできる。
例えば、リモコンを介して、デジタルカメラの画像をPCに取り込んだり、TVに映し出すことも可能になる。
 また、このWi-Fi Directモジュールが、いろいろなものに装備された場合を考えると、Wi-Fi Directは、約180mの有効範囲を持ち、接続にかかる時間が1秒と他の規格に比べ高速である。これは、人の移動速度だけでなく、車の移動速度でも捕らえることができる。人の移動速度で考えれば、家から離れるとTVが勝手にOFFしたり、鍵がかかったり、近づくと明かりが点灯したり、車が車庫に近づくとシャッターが開くなどにも応用できると考える。(図2)
さらに、車の移動速度で考えれば、衝突の可能性のある、移動している端末同士にアラートを発生させるなど、車対車、車対人の事故の防止などの可能性も視野に入れることができる。
Wi-Fi
【図2】Wi-Fi Directの活用イメージ

リモコン用RFモジュールの技術


当社は主にモジュールやリモコン基板上にチップアンテナは使わず、パターンでアンテナを形成する「プリントアンテナ」を採用している。これは、部品コスト面で有利になることはもちろん、リモコンとセット機器間の無線放射特性を最適化できるためである。プリントアンテナの設計には、シミュレーション技術や高周波評価技術が必要になるが、コスト面、無線性能に加えて、各国の無線認証の規制に対しても、総合的に最適化できるなど有利な点が多く、当社の高周波技術ノウハウが生かされている。また、プリントではなく金属アンテナを採用する事例もあるが、その場合も当社の高周波技術により、お客様のリクエストに沿った最適な形状を選択できる。
このことは、ケースデザインの自由度にも貢献し、お客様指定のデザインを損なわずに最適な無線性能を実現できることを示している。
当社は、長年培ったリモコン技術と、これらのRF技術により、単純なキー送信だけでなく、タッチパネル操作や、モーションセンサーの組み込み、マイク装備による音声伝送等々、お客様のニーズに合った高付加価値のリモコンを提案していく。


SMK株式会社 FC事業部 
出典:電波新聞 2012年11月8日 特集「高周波デバイスとモジュール技術」

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