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車載機器向けプッシュスイッチの技術

はじめに

近年、自動車に搭載される機器の電子化が進み、大型液晶モニターの周囲やハンドル周りにも多くのスイッチが搭載され、いろいろな機能を担っている。それに伴い、運転中にドライバーが認識しなければならない情報が増大、操作も複雑化してきている。車載に使用されるスイッチもこれらのニーズに対応したドライバーが認識やすく、誤動作しにくいものの開発に重点がおかれてきている。中でも小型・薄型・高荷重・過負荷耐久性(高動作寿命)など高い信頼性を有し、操作性に優れたものが要求されるようになってきた。
ここではこうした特性を持った車載機器向けプッシュスイッチの技術について解説する。

各種スイッチ
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車載用機器に搭載される主な操作スイッチ

・プッシュスイッチ・・・・電源、ボリュームUP-DOWNキー、モード選択・確定キー、キーレス
・検出スイッチ・・・・ドア、ダッシュボード、トランクルームなどの開閉検知
・スライドスイッチ・・・・モード切り替え、キーロックなど
・ロッカースイッチ・・・・モード切り替えなど(写真参照)。
これらのスイッチの中で、特にプッシュスイッチは車載機器用の入力デバイスとしてさまざまな箇所に使用されている。特に小型・薄型化については車載向けを含むプッシュスイッチにおいてますます進むと思われる。
これに加えて、従来はセット側の機構などで補う場合が多かった高荷重化、過負荷耐久性といった性能もプッシュスイッチ単品にも求められるようになってきた。
こうした高荷重、過負荷耐久性を有したプッシュスイッチが、SMKでいうHCF(High Click Feeling)スイッチである。

小型・薄型化、高荷重、高動作寿命への対応

小型化・薄型化は先にも述べた通り、車載機器の電子化が進み、フロントパネルにドライバーの認識しやすい大型液晶モニターが搭載され、そこに使用されるスイッチのスペースが非常に小さくなってきたことによる。
高荷重については、ドライバーが運転中に誤って操作することが極力無いように、ドライバーに意識的に操作させるためのメーカー側の配慮である。一般機器は1.6N程度であるが車載では2.5N~5Nを要求され、HCFは5.2Nに設定している。高荷重化に伴い、ドライバーは強く押さなければスイッチは動作しないという意識があるため、必要以上の力でスイッチを押すことになる。また、車内では思わぬ車の動作や衝撃により、人的衝撃や物的衝撃が操作パネルに負荷されることも想定され、過負荷耐久性がスイッチの仕様として必須の条件になりつつある。ここでは、動作荷重の上限より高い7N負荷に対応すべく開発を進めているHCFスイッチの『構造』、『高荷重化』、『過負荷耐久性』について述べる。
1)HCFスイッチの構造
HCFスイッチはケース、銀めっきを施した端子・ドーム型接触片、シート、キートップ、カバーで構成(図1)される。操作感と荷重設定を担っているのはドーム型接触片で、このドーム型接触片の中央部が反転動作することで、ケースにインサート成形されている端子間が導通しスイッチの開閉が行われる。(図2)
高荷重化、高動作寿命の実現にはこのドーム型接触片の開発が重要なポイントになる。
2)高荷重化
ドーム型接触片はバネ特性を有した金属接触片であり、ドーム形状の中央を押すことにより動作する。この接触片は、外形が大きければ応力分散が可能で、荷重設定も容易にでき高荷重化にも対応可能であるが、反面小型化になればなるほど応力が集中しやすく、荷重設定は困難で高荷重化には向かない。
HCFスイッチの開発にあたっては小型化という必須条件があったが、小型のドーム型接触片を2枚重ねて使用することにより、高荷重化に対応した(図1参照)。
過負荷耐久性
過負荷耐久性は高い荷重で動作させ、かつ高寿命に関わってくる部品として、ドーム型接触片と動作させるキートップがあげられる。ここではその接触片の過負荷耐久性のポイントである『形状精度』、『スイートスポット』とそれに関わる『キートップ形状』について解説する。
【形状精度】
ドーム型接触片は真円に近いほど応力が均一に分散するため、実際に加工された接触片の形状確認は重要となる。今回開発したHCFに使用される接触片についても、形状が不均一では押す位置により特性が変化してしまう。そのため、加工後の形状を3次元測定機で確認・分析し、そのデータを加工側にフィードバックすることで、より適切な加工条件を導き出し、最適なドーム型接触片を開発した。
図3は当初、不均一な形状だった接触片と、量産している接触片の分析データを示す。
【スイートスポット】
ドーム型接触片はドーム中央のある一部の領域を押すことにより、接触片の本来もっているバネ特性を出すことができる。ドーム形状により必然的に限られた動作領域が決まってしまうため、この領域を超えて使用することは操作感やバネ特性を損なうばかりか寿命の劣化につながる。
この限られた領域をスイートスポットとする。(図4)
このスイートスポット内で接触片を押すことが操作感を維持し、高寿命化、ひいては過負荷耐久性向上に繋がる。
【キートップ形状】
小型化に伴いドーム型接触片のスイートスポットが減少すると、動作するキートップの位置精度が必要となる。ただし、位置精度を上げるためには部品の精度を上げる必要があり、量産では困難な場合が多い。そこで、キートップの接触片を直接押す先端部の形状(図5)をスイートスポットに合わせ、範囲内を押せるようする。しかし、キートップの先端が細すぎると接触片の一部に応力が集中してしまうため寿命を損なう場合があり、事前の解析や評価で適切な条件を見つけることが重要となる。



【図1】構成図

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【図2】断面図

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【図3】3次元測定器によるドーム型接触片の点群データ

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【図4】ドーム型接触片のスイートスポット

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【図5】キートップ

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まとめ

今回HCFスイッチに焦点をあて車載機器向けプッシュスイッチの小型・薄型・高荷重・高動作寿命化について解説したが、スイッチの部品として最も重要となるものはドーム型接触片である。
このドーム型接触片の特性を把握し、スイートスポット内で接触片を押せるようにキートップ形状を合わせ設定していくことなど構造解析・検証が重要と考える。
今回特に触れていないが車載で使用されるスイッチは車内の高温・低温下での環境でも性能を維持しなければならず、温度性能に対しても材料、表面処理など様々な技術を駆使している。
スイッチの開発現場ではこうした厳しい要求に応えるべく、開発のキーポイントとなるドーム型接触片の小型化、部品加工精度の向上、環境性能など新たな要素技術の研究・開発を行っていく。


SMK株式会社 FC事業部 
出典:電波新聞 2012年10月4日 特集「自動車用電子部品技術」
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