”認知症の不安ゼロ”のまちへ宇陀市が挑む、AI×包括連携による地域医療の未来

*「認知症の不安ゼロのまち」を掲げ、AI技術や民間企業との連携による地域医療の充実、持続可能なまちづくりに挑む、金剛 一智宇陀市長
人口減少、過疎化、高齢化率45%超――日本の地方都市が直面する構造的課題に、奈良県宇陀市が新たな挑戦を始めています。「認知症の不安ゼロのまち」を宣言し、民間企業や研究機関など10者による包括連携協定を締結。AI技術を活用した予防から早期発見、医療、見守りまでを一気通貫で支える“宇陀モデル”の構築を目指しています。
薬草文化の歴史が息づくこのまちで、市長が描く未来とは――今回の取り組みの背景や思い、今後の展望について伺いました。
宇陀市の現状と課題―――「高齢になっても地域で頑張りたい」という市民の声にこたえて
奈良県東部の高原に広がる宇陀市は、約1400年前に遡れば、「日本書紀」に推古天皇が薬狩りに訪れたと記録が残るなど、古来より薬草文化と健康長寿の歴史が息づく自然豊かなまちです。しかし現状は厳しく、人口減少や過疎化が進み、高齢化率は45%を超えています。
市民の皆さんは健康への強い関心を持つ一方で、日常生活や将来への不安を抱えています。それでも、「高齢になっても地域で頑張りたい」という前向きな思いが確かにあります。
私はこうした市民の皆さんの思いに応えて、人口減少や過疎という厳しい状況の中でも、市民の安全・安心を守り、しっかりと行政サービスを提供し続ける持続可能な仕組みを築く必要があります。そして、そこからさらに新しい発展を目指す――そんなまちづくりを進めたいと考えています。
高齢者と向き合い続けて見えてきたこと―――地域医療の充実と残された課題

*認知症や介護の悩み、医療・介護サービス、日常生活や将来への不安などを気軽に相談できるオレンジカフェ(宇陀市サンクシティ榛原)
宇陀市では、高齢化が急速に進む中で、地域医療の充実に力を注いできました。
宇陀市立病院は4病棟・176床を備え、奈良県内でも最大規模の地域包括ケア病棟を運営しています。平成31年には「地域医療部」を創設し、在宅医療や介護との連携を強化しました。さらに、令和4年には全国で初めて移動診療車を導入。車内にはエコーやレントゲンなどの検査機器を積んで、医師や看護師が市内を巡回して診療を行っています。これは、過疎地域で開業医の閉院が相次ぐ中、住み慣れた地域で安心して医療を受けられる「面倒見の良い地域医療」を目指した取り組みです。
また、認知症への不安を抱える市民も多く、認知症の理解促進や予防啓発、「いきいき百歳体操」などの交流の場づくり、市立病院でのもの忘れ外来や認知症の初期段階での支援チーム設置など、さまざまな施策を進めています。
しかし、現場の声を聴くと、認知症の方やご家族は周囲の目を気にして相談をためらい、重症化するまで抱え込んでしまうケースが少なくありません。認知症の早期相談や早期受診を促すことは、依然として大きな課題だと感じています。
「40秒の声で気づく」―――心理的ハードルを下げる新しい認知症予防のかたち
認知症の早期発見や早期治療の重要性は、宇陀市として強く認識していました。しかし、実際には早期相談や受診を促す取り組みがなかなか進みません。認知症予防セミナーを開催した際にも、検査に抵抗感を示して途中退席された方がいたほどで、心理的ハードルの高さを改めて実感する出来事でした。
そんな中、SMKが開発したAI音声解析ツールに出会いました。約40秒の音声で「あたまの健康度」をチェックできるこのツールは、国立循環器病研究センターとの共同開発による高精度な判定が特徴です。スマートフォンにアプリを入れるだけで、自宅でセルフチェックが可能――これなら、認知症検査や受診への心理的ハードルを大きく下げられると感じました。
MCI(軽度認知障害)の段階で適切に対策を講じれば、16〜41%が正常に戻る可能性があるというデータもあります。まずは「気軽に自分ごととしてチェックする」文化を根付かせることが大切だと考えています。家族も含めた早期相談の促進、地域の病気への理解・運動・予防啓発を一体化し、認知症の不安ゼロのまちづくりを具体化していきたいと考えています。
「包括連携で一気通貫」―――啓発・予防・早期発見・医療・見守りをつなぐ
令和7年8月、宇陀市はSMK・太陽生命・太陽生命少子高齢社会研究所・宇陀市立病院の5者で連携協定を締結しました。さらに同年10月には、国立循環器病研究センター、国立長寿医療研究センター、東京電力パワーグリッド、リージョナルデータコア、J-MINT認定推進機構などを加え、計10者による包括連携協定を再締結しました。
この枠組みのもと、啓発から予防、早期発見、医療、見守りまでを一気通貫でつなぐ「認知症予防包括プロジェクト」を推進しています。
この連携の意義は、地方都市が共通して抱える課題――過疎化、人口減少、少子高齢化、地域産業の衰退、そして厳しい財政状況――に対し、行政だけでは対応できない現実を打破することにあります。民間企業や研究機関の知見・資源を活用し、行政とともに取り組むことは、これからのまちづくりに不可欠です。
もちろん、着手領域や役割分担の整理、行政と民間のスピード感の違い、庁内の横断調整など多くの課題がありました。しかし、丁寧な協議を重ねることで相互理解を深め、より実効性のある合意形成へとつなげています。
*認知症予防推進に関する包括連携協定の締結について
プロジェクトの第一歩―――市民が気軽にはじめる認知症予防
このプロジェクトの第一歩は、市民の皆さんが、SMKの「あたまの健康度」チェックツールを気軽に使えるようになることです。具体的には、スマートフォンでセルフチェックできる環境を整え、多くの方が自分自身の状態を確認できるようにします。
宇陀市としても、MCIや認知症予防に関するセミナーやイベントを積極的に開催し、その場でチェックツールを体験できる機会を設けたいと考えています。さらに、家族の方々にもチェックの重要性を伝え、情報発信を強化していきます。
宇陀市から全国へ―――“認知症の不安ゼロ”のまちづくりを日本の未来へ
認知症は「早期発見で早期対応すれば改善できる可能性が高い」という認識を広めることが重要です。がん検診が当たり前になったように、認知症も“自分ごと”として気軽にチェックし、早期に対応する文化を根付かせること――これが今回のプロジェクトの大きな目的です。
2040年には認知症やMCIの方が約1,200万人に達するという試算もあります。“宇陀モデル”を全国に広げることは、日本全体の未来にとって大きな希望となるはずです。「地方や都会に関係なくどこに住んでいても、ずっと暮らし続けられるまちづくり」を目指し、宇陀市は“認知症の不安ゼロのまち”の実現に向けて、これからも挑戦を続けていきます。
宇陀市は、市民の「高齢になっても地域で頑張りたい」という思いに、仕組みで応えるまちづくりを進めています。早期発見・早期対応を当たり前にし、安心の連続性を保つ。小さなまちの挑戦をモデル化し、日本の未来へ希望の連鎖を広げていきたいと考えています。

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<宇陀市の風景> 宇陀市HP
榛原猟路の桜

菟田野秋祭り

カエデの郷ひらら

大和当帰根

<宇陀市長とSMKメンバ>

宇陀市長 金剛 一智(こんごう かずとし)
1957年奈良県生まれ。京都大学工学部卒業、同大学院修了。奈良県庁に入庁後、都市計画や防災、地域振興など幅広い分野で行政経験を積み、まちづくり推進局長や知事特命参与などを歴任。2020年より宇陀市長に就任し、2024年に再選。 「認知症の不安ゼロのまち」を掲げ、AI技術や民間企業との連携による地域医療の充実、持続可能なまちづくりに力を注ぐ。
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