音声からMCIの兆候を早期検知する—SMKの研究と社会実装への挑戦
【重要】本記事で紹介する研究は、太陽生命少子高齢社会研究所の開発委託先として、厚生労働省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)」の採択プロジェクトの一環で実施されています。 →[詳細はこちら]
目次
- MCIとその深刻な課題
1.1 MCIの基本的理解
1.2 超高齢社会が直面する深刻な現実
1.3 MCI早期発見の重要なメリット
1.4 早期発見が進まないMCIの現実
1.5 MCI段階での介入アプローチ
- SMKの革新的取り組み:音声解析によるMCI検知技術の研究
2.1 研究手法の詳細と解析アプローチ
2.2 国立循環器病研究センターとの大規模共同研究
2.3 治療方針決定への革新的貢献
- 社会実装に向けた産官連携の取り組み
3.1 保険会社との社会実装に向けた検証
3.2 社会全体での早期発見システム構築
3.3 自治体との連携による地域包括対策
- 社会課題解決に向けた継続的な取り組み
4.1 実証データに基づく科学的アプローチ
4.2 音声解析と技術融合による新たな可能性
- FAQ(よくある質問)
- 関連製品
1. MCIとその深刻な課題
1.1 MCIの基本的理解
MCI(Mild Cognitive Impairment)とは
軽度認知障害の略称で、正常な加齢による物忘れと認知症の中間的な状態を指します。
日常生活に大きな支障はありませんが、記憶力や判断力に軽度の低下がみられる段階です。
参考:厚生労働省 MCIハンドブック
MCIの特長
- 軽度の記憶力低下:人の名前や約束を忘れやすくなる
- 複雑な作業が困難:手順の多い作業でミスが増える
- 軽度の判断力低下:複雑な判断に時間がかかる
- 軽度の言語能力低下:適切な言葉がでにくい
MCIから認知症への移行率は年間10-15%と高く、適切な検査と早期介入なしには多くの方が認知症へと進行する可能性があります。そのため、MCI段階での早期発見の重要性が医学界で強く認識されています。一方で、生活習慣の見直しや運動、社会的活動の維持などにより、MCIが改善したり進行が抑えられる可能性も指摘されています。
1.2 超高齢社会が直面する深刻な現実
日本は世界最速で進む高齢化社会を迎え、2025年中に高齢者人口が3,677万人に達すると予測されています。これに伴い社会保障費は急激に増加し、認知症患者数も同年中に約700万人に達する見込みです。この深刻な社会問題の解決には、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)での早期発見・早期介入が不可欠となっています。
MCI対策は、将来の医療費削減と高齢者の生活の質向上の両面で重要な意味を持ちます。早期発見・早期介入により、認知症への進行を防ぐことが期待できます。
1.3 MCI早期発見の重要なメリット
MCIを早期に発見することで、以下の重要なメリットが得られる可能性があります。特に適切な介入を行うことで、認知症への進行を防ぐことが期待できます。
| 認知症への進行を抑える可能性 MCI段階では認知機能の改善や進行停止が期待でき、特に適切な介入をすることで約30-40%の方で認知機能の改善が見られます。 |
| 生活の質の維持 早期対応により自立した生活を長期間維持でき、本人・家族の負担軽減につながります。 |
| 治療選択肢の拡大 軽度の段階であれば薬物療法や非薬物療法いずれも効果が高く、より多くの治療選択肢から最適なものを選べます。 |
| 将来に向けた準備ができる 判断能力がある段階で財産管理や医療方針などの重要な決定を行えます。 |
特にMMSE(Mini-Mental State Examination)や長谷川式簡易知能評価スケールなどの医療検査を受けるきっかけとして、音声分析によってMCIの初期変化を検知できる可能性が注目されています。これらの検査は専門的な医療機関での実施が必要ですが、音声技術により予防段階でのスクリーニングが可能になれば、より多くの方がMMSEや長谷川式による詳細な医療評価につながる機会を得ることができます。
参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 認知症臨床研究・治験ネットワーク
1.4 早期発見が進まないMCIの現実
しかし現実には、MCIの早期発見は多くの課題に直面しています。
| 自覚症状の乏しさ MCIは初期症状が軽微なため、検査を受ける機会が少なく、問題が認識されにくい特徴があります。MCI患者自身が変化に気づきにくいことも課題の一つです。 |
| アクセス困難 高齢者にとって医療機関へのアクセスが困難なケースも多く、受診率向上を妨げています。 |
| 専門医療体制の不足 対応可能な医療機関や専門医の不足も課題となっています。適切な医療を提供できる医療機関の拡充と、長谷川式やMMSEなどの標準的な検査を実施できる体制整備が急務となっています。 |
| 経済的・時間的負担 検査の費用や時間的負担、心理的抵抗感も大きな障壁となっています。 |
1.5 MCI段階での介入アプローチ
医療機関での検査で気づきを得た後、以下のようなアプローチが効果的とされています。
こうしたMCIをめぐる現状に対し、SMKは課題解決に貢献すべく研究を開始しました。
2. SMKの革新的取り組み:音声解析によるMCI検知技術の研究
2.1 研究手法の詳細と解析アプローチ
私たちの研究は、音声に含まれる微細な変化がMCIの早期兆候を示すという仮説に基づいています。
先行研究では、認知機能の低下が言語処理能力に影響を与え、それが音声の周波数や、韻律等の変化として現れることが明らかになっています。
- 音声収集:
- 3分の自由発話を同条件で収集
- 多次元音響解析:
- 声の周波数、韻律、イントネーションや発話速度等を解析
- 機械学習モデル:
- 深層学習で健常者とMCIを判別
- 統計的検証:
- ホールドアウト検証により、モデルの精度と再現性を確認
MCI対策は、将来の医療費削減と高齢者の生活の質向上の両面で重要な意味を持ちます。早期発見・早期介入により、認知症への進行を防ぐことが期待できます。
2.2 国立循環器病研究センターとの大規模共同研究
2,000人規模の画期的研究設計 研究規模
国立循環器病研究センターとの共同研究では、宮崎県延岡市及び兵庫県の介護施設の高齢者約2,000人を対象とした調査を実施しました。この研究規模は、MCI研究としては非常に大規模な試みとなります。調査参加者の約3割がMCIに該当する状況下で、音声データの収集と認知機能評価を並行して行いました。音声特徴量(声の特徴を数値化したデータ)と認知機能との関連性を詳細に分析することで、科学的根拠に戻づいた検証を実現しています。
革新的な研究成果 主要成果
90%近い高精度判別を実現
40秒の自由発話音声から、健常者・MCIの判別が80%以上の精度で可能であることを実証しました。この精度は従来の簡易認知機能検査と同等レベルです。 また、年齢や性別、教育年数などの情報と組み合わせることで、さらに高い90%近い精度(AUC:0.89)での判別が可能です。
遠隔での認知機能チェックの実用性を確認
スマートフォンやPCアプリ、電話による遠隔での認知機能チェックの実用性を実証した画期的な成果と言えます。
医学界との本格的コラボレーション 学術連携
専門医師との照合検証
国立循環器病研究センターの物忘れ外来患者100人程度の音声データも収集し、医師の診断結果を正解とした検証研究も今後実施していきます。
適用範囲の拡大研究
このデータは将来の認知症判別モデル開発の重要な基盤となっています。現在は認知症だけでなく、抑うつ傾向やうつ病の判別アルゴリズム開発も進めており、 認知症の併発疾患として多いうつ病や心不全患者への適用拡大を視野に入れた包括的な研究を展開しています。
学術的な取り組み姿勢 信頼性
研究成果は査読付き学術論文として公表し、科学コミュニティからの検証を受けています。また、研究プロセスの透明性を保ち、再現可能な研究手法の確立に努めることで、科学的信頼性を担保していきます。
本研究に関する論文は以下リンクよりご確認ください。
掲載誌:The Lancet Regional Health – Western Pacific
表題:Developing and testing AI-based voice biomarker models to detect cognitive
impairment among community dwelling adults: a cross-sectional study in Japan
2.3 治療方針決定への革新的貢献
音声解析により認知症の兆候を早期に発見することができれば、MCI段階での治療薬選択や適切な医療対応の決定に貢献できる期待が高まっています。さらに、専門的な医療機器を使わずに音声のみで判別できれば、医療現場での実用的価値は計り知れません。
3. 社会実装に向けた産官連携の取り組み
3.1 保険会社との社会実装に向けた検証
生命保険会社と連携し、営業職員を対象に、加入促進ツールとしての有効性を検証する大規模な実証実験を実施しました。営業職員がこの技術をお客様向けツールとして活用することで、認知症保険などの提案につなげることが期待されています。さらに、加入後のヘルスケアサービスや保険引受時の審査(アンダーライティング)への応用など、多様な連携の可能性についても検証を進めています。
3.2 社会全体での早期発見システム構築
保険加入者への定期的な認知機能チェックにより、社会全体の早期発見率を向上できる可能性が示唆されています。この取り組みにより、自立支援の観点からも大きな社会的意義があります。さらに、この技術の効率的活用により、より多くの人々に認知症との違いを理解してもらう機会を提供できます。
3.3 自治体との連携による地域包括対策
保険会社とも連携し、自治体への提案を強化しています。特に高齢者人口が急増する地方の自治体では、認知症対策は喫緊の課題となっており、医療費/介護費の増加抑制という財政面でのメリットも期待されています。
参考:認知症予防推進に関する包括連携協定の締結について
4. 社会課題解決に向けた継続的な取り組み
4.1 実証データに基づく科学的アプローチ
実証研究から得られた知見は、認知症予防と早期発見における革新的アプローチの可能性を明確に示しています。机上の理論ではなく、数千人規模の調査や医療機関での検証を通じて得られた知見だからこそ、その実現可能性と社会的インパクトに大きな期待が寄せられています。
このような実証データは、認知症・MCI事業への投資を検討する企業や自治体にとって、確かなエビデンスに基づく判断材料となることが期待できます。
4.2 音声解析と技術融合による新たな可能性
音声解析、センサー技術、IoT、ビッグデータ分析といった最新技術と、 医学・社会保障・地域づくりとの融合により、これまでにない包括的な認知症・MCI対策の可能性が見えてきました。学術的な厳密性を保ちながら、実用性の高い技術開発を通じて、すべての人が安心して年齢を重ねられる社会の実現に貢献していきます。
5. FAQ(よくある質問)
基本的なMCIに関するFAQ
Q1. MCIとは何ですか?認知症との違いは?
A. MCI(軽度認知障害)は、正常な加齢による物忘れと認知症の中間的な状態です。
日常生活に大きな支障はありませんが、記憶力や判断力に軽度の低下が見られます。
認知症と違い、基本的な日常生活は自立して行えます。
Q2. MCIから認知症になる確率はどのくらいですか?
A. MCIから認知症への移行率は年間10-15%です。
ただし、適切な介入により約30-40%の方で認知機能の改善が見られることも報告されています。
Q3. MCIのスクリーニング検査にはどのようなものがありますか?
A. 代表的な検査として、MMSE(Mini-Mental State Examination)や長谷川式簡易知能評価スケールがあります。
これらは専門的な医療機関で実施される標準的な認知機能検査です。
Q4. MCIのチェックリストはありますか?自分でチェックできますか?
A. 簡易的なチェック項目はありますが、正確な診断には医療機関での専門的な検査が必要です。
気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
SMKの研究に関するFAQ
Q5. 音声でMCIが分かるというのは本当ですか?
A. 私たちの研究では、40秒の自由発話から健常者・MCIの判別が80%以上の精度で可能であることを実証しました。
これは従来の簡易認知機能検査と同等レベルの判別能力です。
Q6. どのような技術なのですか?痛みはありませんか?
A. 電話やスマートフォンで40秒間自由に話していただくだけで分析できる技術です。痛みは全くなく、自宅でも実施できます。
Q7. この技術はいつ実用化されますか?
A. 現在、複数の企業・自治体と実用化に向けた検証・協議を進めており、実現に向けた取り組みを加速しています。
また、法人・自治体との連携を想定しており、個人向けの利用は想定していません。
Q8. この技術を利用するにはどうすればよいですか?
A. この技術の導入をご検討の場合は、当社のお問い合わせフォームからご相談ください。
医療・診断に関するFAQ
Q9. MCIの診断基準は何ですか?
A. MCIの診断は専門医が複数の検査結果を総合して行います。記憶障害の訴え、客観的な認知機能低下、日常生活能力の保持などが主な診断基準となります。
Q10. MCIの検査はどこの医療機関で受けられますか?
A. 神経内科、精神科、物忘れ外来などがある医療機関で受けることができます。かかりつけ医に相談して適切な医療機関を紹介してもらうのが良いでしょう。
Q11. MCIの治療薬はありますか?
A. 現在、MCI専用の治療薬は承認されていませんが、レカネマブ等のアルツハイマー病によるMCIも対象とした治療薬は実用化されています。
認知症/MCIの治療薬については、現在も研究開発が精力的に進められており、今後さらに有効性の高い治療薬が承認されることが期待されています。
Q12. MCIの予防方法はありますか?
A. 認知トレーニング、週数回の有酸素運動、社会的活動への参加、生活習慣病の管理などが効果的とされています。
研究参加・問い合わせに関するFAQ
Q13. この研究に参加できますか?
A. 現在の研究状況により参加可能性が変わります。研究参加については、当社のお問い合わせフォームからご相談ください。
Q14. 共同研究や技術提携は可能ですか?
A. 医療機関や企業との共同研究については、お問い合わせフォームからご相談ください。特に医療機関、保険会社、自治体との連携を積極的に進めています。
中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)
SMKは、太陽生命少子高齢社会研究所の開発委託先として、「音声データを活用した要介護リスクの早期発見 AI」 の開発を行っています。この取り組みは、太陽生命少子高齢社会研究所が提案者の一つとして参加し、国立研究開発法人 国立循環器病研究センターの協力を得て、厚生労働省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)」に採択されたプロジェクトの一部です。
プロジェクトの目的:音声データをはじめとする“リアルワールドデータ”を活用し、要介護リスク(認知機能低下、抑うつ傾向、疲労度など)を早期に検知するAIシステムの構築と、予防的な介入による健康寿命の延伸を目指しています。
中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)とは
SBIR(Small Business Innovation Research、ここでは「中小企業イノベーション創出推進事業」)は、日本政府による制度で、革新的な研究・開発を行う中小企業やスタートアップが、その成果を社会実装につなげることを目的としています。
厚生労働省が実施しており、フェーズ3基金を含む一連の支援が行われているプロジェクトです。 本事業はこの制度の枠組みの中で「リアルワールドデータを活用した疾患ハイリスク者の早期発見AIシステム開発と予防介入の社会実装検証」というテーマのもと、複数の領域にわたるテーマ(ライフコースデータ構築、AI開発、DX化、予防・介入など)が設定されています。音声データを活用して要介護リスクを早期に発見することは、その中の “AI開発” の領域におけるテーマの一つです。
SBIRにおけるSMKの役割
SMKは、本プロジェクトにおいて次のような役割を担います。
共同開発パートナー
SMKは、太陽生命少子高齢社会研究所および国立循環器病研究センターと協力し、音声データを活用した要介護リスク(認知機能の低下、抑うつ傾向、疲労度など)の早期発見AIの開発・実装に参加します。具体的には、音声の収集・前処理、特徴抽出アルゴリズムの設計、AIモデルのトレーニングと評価、安全性・精度の検証などを実施しています。
社会実装に向けた検証
研究開発だけでなく、SBIRの枠組みでは技術を社会で実用化するための検証も求められています。SMKは、実社会で使用されることを想定した利用シナリオの検討や、運用上の課題(プライバシー・データ取扱い・操作性・継続性など)の洗い出しと改善を太陽生命少子高齢社会研究所と共同で行っていきます。
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