コネクタ
SMKTOP > Classification > Connectors TOP > コネクタ技術記事一覧 > コネクタ技術記事 Micro-USBコネクタの技術動向

Micro-USBコネクタの技術動向

【背景】

Micro-USB(USB2.0 High speed)は、コンピュータとその周辺機器とを接続するためのインターフェイス規格であるUSB(Universal Serial Bus)規格の中の1つ。
2009年までは、日本国内市場では、USBシリーズのmini-USBはかなり普及したが、Micro-USBは、海外輸入製品で見られる程度であった。
携帯電話の充電端子は、これまで統一性がなく、各メーカー個別の仕様であったが、2009年2月に業界団体のGSMA Mobile World Congress 2009で、充電用端子をMicro-USBで統一することが世界の主要携帯電話メーカー間で合意された。
また、同年10月、国連機関の国際電気通信連合(ITU)によって、携帯電話の汎用充電器の規格「Universal Charging Solution」として承認された。
さらに、2010年6月には、欧州連合の政策執行機関である欧州委員会で、欧州で販売する携帯電話の充電器の標準化に主要メーカー10社の合意が発表された。
これらの影響を受けて、日本国内市場でも2009年後半よりMicro-USBの普及が急速化している。また、最近1~2年において、携帯電話は世界的にみても先進国に加え発展途上国でも生活必需品になりつつあることから、Micro-USBが充電用端子として統一された影響は大きく、普及の急速化に拍車がかかると考えられる。
SMKでは、2008年末より、主に携帯電話やスマートフォンなどの小型携帯機器向けにMicro-USBコネクタを販売開始しており、2009年秋以降は、国内外を問わず、カスタム仕様品、標準品レパートリーの拡充要求が急激に増えている。
通常のノーマルタイプに加え、①スタンドオフタイプ、②リバースタイプ、③ミッドマウントタイプなど。また、シェル実装部はDIPタイプ、SMTタイプを用意。

【構造】

Micro-USB基本構造
【図1 Micro-USB基本構造】

Micro-USBの基本構造は、端子、モールド、シェルの3点から成る(図1)。
製法は、耐こじり負荷に有利な、端子をインサートモールディングする製法をとっており、プラグ押込み負荷対策のストッパー形状をシェルに設けている(図2)。
インサートモールド部とシェルの組込みにおいては、独自のシェル構造により落下時などの耐衝撃、耐こじり性能に対して堅牢化を図った。
インサートモールディング端子とストッパー
【図2 Micro-USBのインサートモールディング端子とストッパー】

【課題】

補強カナグで堅牢化アップ
【図3 補強カナグで堅牢化アップ】
上記のように、Micro-USBが急速に普及している中で、課題も色々と出てきている。 第一に、特に、携帯電話市場において、コネクタの基板剥離が多発しているという事例があり、市場全体でさらなる堅牢化アップの要求が高まっていることである。従来は、コネクタ自体のサイズアップを嫌い、シェルの基板への固定の仕方で対策をとろうとするケースが多かったが、不十分であることからシェル外側をさらに別部品の補強カナグで覆う手法を採る事例が出てきている(図3)。つまり、最近のトレンドとしてはサイズの小型化より強度アップ重視に推移してきている。
このようなトレンドの推移は、同じUSBシリーズの中でもmini-USBでは積極的な動きは見られなかった。これは、Micro-USBがmini-USBと比較し、いかに搭載対象製品が多く、また、使用頻度の高い製品に搭載されているかをうかがわせる証でもある。
第二に、コネクタ間口内部のモールド部の破壊強度アップ要求が多いことである。正規規格品プラグを使用した場合でも、プラグをコネクタへ斜め挿入した場合に、プラグのシェル角部がコネクタ間口内部のモールド部に容易に当ってしまうことにより破壊が発生する(図4)。
モールド部が破壊してしまうと、それと同時に端子部も破壊に至り、最悪の場合はコネクタとしての機能を損なう。この改善策として、従来は、Micro-USBのような小型コネクタにおいては、端子をインサートモールディングする製法の場合、モールド材料は、流動性に優れる液晶ポリマー(LCP)を使用する事例が多かったが、最近では、結晶性のポリアミド系材料(ナイロン)を使用するケースが増えてきている。割れ破壊の発生し難い材料を選定することで少しでも破壊の軽度化を図るというものである。
プラグの斜め挿入時の状態
【図3 プラグの斜め挿入時の状態】
フランジ形状削除
【図5 フランジ形状削除】
次に、Micro-USB2.0規格アップデートに関する内容に触れておきたい。シェルのフランジ形状を削除すること(図5)が、2010年5月に規格上で認められた。これは、デザイン上の都合によるものだが、これを採用したいという動きはセットメーカー各社に見られるがデメリットもある。フランジを削除したことで、プラグ側のハーフロックラッチ部によるシェルの磨耗部位が局部化し、寿命耐久性で挿抜10,000回というスペックをクリアするためには、潤滑材の使用を避けられないのが実状といえる。
当社においても、フランジなしタイプに最適な潤滑材塗布の対応をとっている。
以上のように普及が急速化しているMicro-USBだが、市場が大きい分、課題も様々である。最近では、防滴、防水仕様のニーズも高まっており、当社でも開発を進めている。
防滴、防水レベルは、JIS規格で定められているIPX□での仕様レベル区分けが一般的であり、構造においては、①金属部品とモールドとの密着性、②水の侵入経路の沿面距離の確保が重要とされる。これらをクリアできるための最適製法を選定することが肝要である。
今後、当社でも更なるレパートリーの拡充を進める計画である。

【Micro-USB3.0について】

最後に、Micro-USB3.0について触れる。USB3.0自体は、2008年11月にスペック公開されているが、Micro-USBについての詳細スペックはUSB-IFメンバーで審議中となっている部分もある。基本形状は、Micro-USB2.0の横にUSB3.0部分を追加したタイプ。追加部分は角型形状で、A/Bタイプの形状区別はない。区別はUSB2.0側で行う。追加のUSB3.0部分は、USB3.0の送受信ペア(4極)とUSB3.0専用のGND(1極)から成る。極数はUSB2.0の4極からUSB3.0では9極に増えることになる。
信号転送速度は、スペック上でUSB2.0の480MbpsからUSB3.0では5Gbpsにまで高速化されるため、ケーブルとプラグ部の結線およびコネクタ実装部などの接続部におけるインピーダンズマッチングを考慮した設計対応が必要とされる。Micro-USB3.0については、本格的な普及時期はもう少し先になると思われる。

筆者:SMK株式会社 CS事業部 
出典:電波新聞 2010年9月2日 特集「コネクタ技術」

  • お問い合わせ
  • 3Ddatadownload
  • 技術用語集
  • コネクタ技術情報