タッチパネル
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車載用静電容量方式タッチパネルの技術

はじめに

静電容量方式タッチパネルはスマートフォンやタブレット等で数多く採用されている。 2007年にiPhoneが発売されて以来、「マルチタッチ」「フェザータッチ」といった静電容量方式独特の操作感がユーザーに浸透しており、車載用ディスプレイなど他のアプリケーションでもこの操作感を採用していきたいというニーズが高まっている(写真1)。
静電容量方式タッチパネル
【写真1】静電容量方式タッチパネル

市場要求と取り組み

カーナビなどの車載ディスプレイ用途では、これまで主に抵抗感圧方式タッチパネルが採用されてきた。抵抗感圧方式は押圧を必要とする入力方法で誤動作が少なく手袋などでの入力が可能という特徴がある。
一方、静電容量方式のタッチパネルはノイズの影響を受けやすく、車載の環境では誤動作が懸念されることや、手袋入力が難しいなどの課題があり、車載用途には採用が進んでいなかった。
しかし、スマートフォンの急速な普及や通信機能を持ち、Webサービスを利用できるような車載情報システムの搭載により、国内外の自動車/電装メーカーから静電容量方式の操作感を車載用途にも採用したいという要望が高まっている。
また、静電容量方式タッチパネルを使うと、センサー表面にガラスやアクリルなど厚く硬い加飾パネルを用いることができるため、スマートフォンのように加飾パネルで機器の表面全体を覆って自動車の内装と一体感のあるフラットなデザインに対応できる(図1)。

【図1】タッチパネルの基本構造比較
既に市販のカーナビやオーディオ機器には静電容量方式タッチパネルが採用されており、2013年以降には純正製品も含めて採用が本格的に増加すると予想される。
静電容量方式はセンサー回路の静電容量変化を読み取ることで座標位置を検出するもので、大別して表面型(Surface capacitive)と投影型(Projected capacitive)がある。
表面型は四隅の電極に電圧が印加されてパネル面に均等な電界が形成されている状態で、指が触れた際の電界変化を読み取ることで座標位置検知を行う。構成が単純で大型化しやすいため、10インチ以上の大型パネルに向いている。
投影型は複数の電極パターン上の容量変化を電気的な充放電時間の変化として読み取ることで、座標位置を検出する方式であり、入力面が大きくなれば必要なセンサー本数が増え、コントローラの入出力端子数の限界やスキャンタイムの増加などの問題が発生する。
そのため大型化には向かない方式と言われているが、近年は12インチ程度まで対応が可能になっている。
SMK製タッチパネルは投影型静電容量方式を採用している。
投影型静電容量方式タッチパネルの検出方式には、自己容量(Self capacitance type)と相互容量(Mutual capacitance type)の2種類がある。
自己容量方式と呼ばれる検出方法は比較的古くから使用されている静電容量検知方式である。
X-Yの格子状に配置した各センサを順次駆動して、受信側で各センサの容量変動分を取得し、タッチオンの位置を検出する。
自己容量方式で確実な座標識別ができるのは1点までであり、2点以上を同時に入力した場合には真の入力位置と識別できないゴースト座標が発生する(図2)。相互容量方式と呼ばれる検出方法はX-Yのセンサー間(交差部)の容量変動を順次読むことで指がタッチされた位置座標を検知する。X-Yセンサー間の容量変化はXまたはY側の片側のセンサーをドライブし、反対側のセンサーで受信して読み取ることで容量変化の位置を検知するため、どの位置で浮遊容量が変化したかがはっきりわかる。そのため、2点以上の同時入力をゴーストを発生させずに検出することが可能である(図3)。

【図2】自己容量方式によるゴースト座標
相互容量方式
【図3】相互容量方式
現在は3点以上のマルチタッチが可能な相互容量方式が主流となっている。
車載用の静電容量方式タッチパネルの技術的な課題としてノイズ耐性の向上および手袋入力などに対応するためのタッチ感度の向上があげられる。
ノイズ耐性やタッチ感度はSNR(信号対ノイズ比)特性を上げることにより向上する。
SNR特性は下記の組み合わせにより決定される。
1.タッチパネル用コントローラの性能
ハード構成、検知方式や座標認識のアーキテクチャなど
2.タッチパネルモジュールの仕様
センサーパネルの構造、材料、ITOパターン、コントローラへの配線など
3.タッチパネルの使用環境
ディスプレイの種類、製品への取り付け構造、意匠パネルの材質や厚みなど
SMKではコントローラメーカーと情報交換を行いながらコントローラの性能を十分に発揮できるようにマッチングしたタッチパネルモジュールを開発している。車載用タッチパネルモジュールの評価に際しては、使用環境に合わせてコントローラのパラメーターをチューニングし、座標精度やリニアリティなどの基本性能を評価するとともに、これまで車載用抵抗感圧方式タッチパネル開発で培った経験を活かして車載用部品としての信頼性評価を実施している。抵抗感圧方式では問題にならなかった電磁環境適合性(EMC)についてもタッチパネルモジュールとしての評価方法の確立に取り組んでいる。
また、車載用タッチパネルが静電容量方式になると、操作時のフィードバック感が失われ、ユーザーにとって安心感を損なう恐れがあるといわれている。これを改善するためにモ-タやピエゾ素子の疑似振動で操作フィーリングを与えて操作感を向上させるハプティックデバイスの需要が高まると予測される。SMKでは既に抵抗感圧方式タッチパネルに振動機能を付加したフォースフィードバック(FFB)タッチパネルを量産しているので、この技術を応用して静電容量式FFBタッチパネルの開発も進めている。

製品紹介

SMKは昨年10月に手袋装着時にも入力可能な車載仕様静電容量式タッチパネルを発表した。
本製品は、寒冷地での運転時に手袋を装着してタッチパネルの入力が想定される車載用途向けに開発した。高感度検知に対応したコントローラの採用とノイズ耐性の強いセンサーパネル構造の組み合わせにより、ノイズによる誤動作を極力削減し高感度のセンシングを実現した。その結果、防寒用の手袋装着時でも入力が可能になった。さらに、指先による操作の場合は1.5mm厚のプラスチック製化粧板を配置しても軽快な操作が可能となるため、操作部に求められるスタイリッシュな各種形状・仕上げにも対応できる。
本製品に使用しているコントローラは超狭帯域アナログフロントエンド(AFE)を集積化しているため、タッチありとなしで1000:1の比に相当する非常に高い信号対ノイズ比(SNR)を備え微弱なタッチを検出することが可能。ノイズのあるところで最適な動作周波数を選択することが可能でLCDノイズなどのノイズ源に対する優れた耐性を備えている。SMKでは、このコントローラの特性にマッチしたセンサーパネル構造を採用、手袋入力可能な静電容量方式タッチパネルモジュールを実現した(写真2)。
手袋対応デモ
【写真2】手袋対応デモ
(製品概要)
1. 特 徴
車載純正仕様に対応している。
手袋入力が可能。
意匠パネルを貼ることにより、フルフラット化が可能。(1.5mm以上)
入力ポイントは最大10点。
フリック操作、ドラック&ドロップ入力が可能。
8インチまで対応可能。
2. 用 途
カーナビゲーション、車載用センターコントロール
3. 主な仕様 透過率 :93%(MAX)
反射率 :3%(MIN)
インターフェース :I2C

今後の展開

デバイスメーカー各社から耐ノイズ性を高めてSNRを向上した静電容量方式のタッチパネルコントローラICが発表されている。これらのコントローラにマッチした高感度のタッチパネルモジュールを開発することにより、インパネと一体化した曲面デザインの加飾パネル、空中でジェスチャーを検知するHover機能、LCDとタッチパネルの直貼りによる視認性改善等への対応を始めている。


SMK株式会社 TP事業部
出典:電波新聞 ハイテクノロジー 自動車用部品技術特集 2012年4月12日掲載

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